サマリー
◆11月6日、欧州中央銀行(ECB)は定例の理事会を開き、政策金利である主要オペ金利を0.05%に据え置く決定をした。また同様に、上限政策金利である限界貸出金利および下限金利である中央銀行預金金利をそれぞれ0.3%、マイナス0.2%と据え置いている。日銀の追加緩和に続きECBに対しても期待されていた、社債・国債等の買い入れによる量的緩和の導入は先送りとなった。
◆11月4日、ECBは、念願であった銀行同盟の柱のひとつである、単一監督制度(SSM:Single Supervisory Mechanism)をスタートさせた。域内の資産規模が大きい主要120行を直接監督し、その他の域内3,500行を間接的にモニタリングする体制に移行した。来年1月にユーロに加盟するリトアニアが加わると参加は19ヶ国に達する。
◆銀行同盟の実施の先駆けとしてECBでは、資産査定(AQR: Asset Quality Review)を実施し、その結果を10月26日に発表している。今回のAQRの査定では、隠れた不良債権である猶予債権(Forbearance)を各行で特定し、総額1,360億ユーロ(18.6兆円)の追加的な不良債権の存在を明らかにしている。
◆国別の結果では、南欧諸国の中でもイタリア、ギリシャ、キプロスの3ヶ国において、相対的に引当金の追加額、資本不足額等が大きいのが特徴であった。一方、前評判が悪かったにもかかわらず相対的に良好な結果であったのがスペインであった。
◆今回のAQRを実施した130行のロシア向け融資エクスポージャーの上位国をみるとフランス(241億ユーロ)に次いでイタリア(181億ユーロ)となっており、ロシア企業等との関係の強さが示されている。対象行全体について、ロシア通貨危機時(1998-1999年)の不良債権比率をあてはめて試算すると234億ユーロ、リーマン・ショック時を想定すれば55億ユーロの追加の不良債権が見込まれる試算となった。
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