遂に住宅バブル対策に本気になり始めたBOE

差し迫る金利引き上げに怯えるスクイーズドミドル

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2014年08月12日

サマリー

◆英国中央銀行(BOE)カーニー総裁は、7月15日の議会証言で、過熱する英国の住宅市場に対して「(各金融機関の)住宅ローン審査が甘く、無理に許容度を超えて貸し出しすることを懸念している」と発言し、リスクを軽視して過大な住宅融資に走る金融機関を牽制した。


◆BOEの中に設けられた金融安定政策委員会(FPC)は、過熱する住宅市場への対策として、銀行の新規住宅ローンに上限を付す新たな引き締め策を明らかにした。この施策は、所得に対する住宅ローンの割合(LTI)が4.5倍以上になるハイリスクな物件への融資を、行内の新規住宅ローン実行の15%以内に収めるように各金融機関に勧告したものである。


◆今回の住宅ローン融資制限により影響が懸念されているのが、30代半ば〜40代前半の年齢的にも収入的にも中間の人々ともいわれている。(住宅の購入希望者が最も多い世代でありながら)住宅ローンを組もうにも、所得の4.5倍以内に抑えることができない申し込み者が多いのも、この階層といわれている。たとえ住宅ローンが組めたとしても、利上げによりローンの支払いに困窮し真っ先に破綻する可能性が高いといえよう。


◆現金一括で購入できるほどの富裕層でもなく、社会給付手当に頼るほどの低所得者でもない彼らのことを、英国ではスクイーズドミドル(圧迫される中間層)と揶揄する現実がある。まさに、上下の世代に搾り取られる中間層の不満にどのように対応するのか、BOEの手腕が試される重要な局面ともいえるだろう。

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