サマリー
◆7月10日、ポルトガルの上場最大手銀行であるバンコ・エスピリト・サント(BSE)の株価が急落し、欧州では銀行の信用不安が再燃する兆しが表れた。翌日以降、市場は安定を取り戻したが、そもそも欧州債務危機以降、南欧諸国の銀行の構造的な問題が解決したわけではない。
◆BSE株価の急落の翌日に、英国中央銀行(BOE)は、金融行政委員会の市中協議文書の中で、銀行規制の新たな強化策の検討に入ったことを発表した。今回の市中協議では、英国の大手行に対しては、レバレッジ比率の早期導入を促すと同時に、基本となる3%を上回る補完的な水準を求めることを検討している。既に、昨年11月にBOEが発表した資料の中にも、2014年1月の段階でレバレッジ比率を3%にすることを指導しており、それに続く具体的な強化策ともいえる。
◆ECBはあくまで銀行検査の統合にこだわる姿勢を示しているが、現状を鑑みればその必要はなく、(ドイツを中心とするユーロ域内の)北欧州と南欧諸国とでは、異なる規制適用を推し進めることが求められているといえよう。統合ありきの議論の前に、南欧諸国に適正な資本水準を検討していれば、たった銀行1行の信用不安が、全世界に伝播することは避けられたはずだ。今回の市場参加者の本能的な投資行動に対して、今後、どのようにECBが反応を示すのかは注目していきたい。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
-
米GDP 前期比年率+2.8%と加速
2024年4-6月期米GDP:内需主導での堅調さを維持
2024年07月26日
-
監査・ガバナンス強化へ回帰する英国
昨年撤回した監査強化方針を復活し、ガバナンス・コードも厳格化へ
2024年07月25日
-
女性がキャリアを築ける職場ほど、子どもを持ちやすい
健保組合ごとの被保険者・被扶養者の出生率と、その要因の多変量解析
2024年07月24日
-
GX経済移行債に期待されるインパクトレポーティング
~GXの理解醸成促進に向けて~『大和総研調査季報』2024年夏季号(Vol.55)掲載
2024年07月24日
-
盛り上がりに欠ける英国の政権交代
2024年07月26日
よく読まれているリサーチレポート
-
「国債買入減額+利上げ」だけで長期金利は2%超えか
シナリオ別に見た日銀の国債買入減額による長期金利への影響試算
2024年06月12日
-
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
-
第221回日本経済予測(改訂版)
賃上げ・物価高の先にある経済の姿と課題は?①賃上げ効果、②貿易デジタル赤字、③トランプリスク、を検証
2024年06月10日
-
「事業性融資の推進等に関する法律案」概要
事業性に着目した企業価値担保権の創設
2024年05月30日
-
バーゼルⅢ最終化による自己資本比率への影響の試算
標準的手法採用行では、自己資本比率が1%pt程度低下する可能性
2024年02月02日
「国債買入減額+利上げ」だけで長期金利は2%超えか
シナリオ別に見た日銀の国債買入減額による長期金利への影響試算
2024年06月12日
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
第221回日本経済予測(改訂版)
賃上げ・物価高の先にある経済の姿と課題は?①賃上げ効果、②貿易デジタル赤字、③トランプリスク、を検証
2024年06月10日
「事業性融資の推進等に関する法律案」概要
事業性に着目した企業価値担保権の創設
2024年05月30日
バーゼルⅢ最終化による自己資本比率への影響の試算
標準的手法採用行では、自己資本比率が1%pt程度低下する可能性
2024年02月02日