サマリー
◆ユーロ圏の3月の消費者物価上昇率は前年比+0.5%に低下し、ECB(欧州中央銀行)が目指す「前年比+2.0%をやや下回るインフレ率」からさらに乖離してしまった。ただし、イースターが昨年は3月、今年は4月とずれたことが物価下押しに作用したと考えられ、また4月のエネルギー価格は3月ほどには下落しないと見込まれるため、4月の消費者物価上昇率は前年比+0.8%程度に加速すると予想する。ユーロ圏は内需を中心に緩やかな景気回復の初期過程にある。景況感は改善トレンドを維持しており、景気回復が継続するとの見通しをメインシナリオに考えている。
◆景気回復シナリオのリスクは、急速なユーロ高の進行と考えられる。ユーロ高はようやく回復の兆しが出てきたユーロ圏の輸出にマイナス材料となる。また、ウクライナ問題の解決の見通しがなかなか立たないことに加え、5月は欧州議会選挙があり、フランスを中心に欧州の政治動向が注目されやすくなるのではないかと予想している。
◆英国では最新(2013年12月-2014年2月の平均)の失業率が6.9%となり、5年ぶりに7.0%を下回った。就業者数も引き続き拡大傾向にあるため、内需主導の経済成長が続くと見込まれる。ただ、同時期の賃金上昇率は前年比+1.7%となり、4年ぶりにようやく消費者物価上昇率を上回ったばかりである。他方で住宅価格の上昇はこのところ加速が見られ、これが英中銀(BOE)がユーロ圏はむろんのこと、米国にも先んじて利上げに踏み切るのではないかという観測を呼んでいる。ただ、BOEは住宅市場の過熱に対して、利上げよりも住宅ローン奨励策の制限などで対応する方針で、金融政策の方針転換に関しては、景気の強さを見極めつつ、2015年の課題となると予想している。
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