サマリー
◆3月6日の金融政策理事会でECB(欧州中央銀行)は政策金利を据え置き、他の金融緩和措置も見送った。注目されたECBスタッフの景気予想では2014年のインフレ率予想は+1.0%に下方修正されたが、緩やかな景気回復を背景に2016年10‐12月期には前年比+1.7%まで上昇し、ECBが目指す「+2.0%をやや下回るインフレ率」が達成されるとの見通しが示された。最近のユーロ圏の景気指標は、低インフレ下での緩やかな景気回復予想を裏付ける内容となっているが、ウクライナ問題という新たなリスクの影響の見極めがまだできない中でECBは様子見を選択したと考えられる。
◆ECBは2007年以降の金融・財政危機への対応として、大幅利下げ、銀行への潤沢な資金供給、国債購入プログラム(SMP、OMT)の導入などを実施し、その結果、銀行が資金繰り難で突然破綻するリスクは大きく後退し、市場金利は低下した。ただ、金融政策の伝達で重要な役割を果たす銀行部門の再生は道半ばで、特に中小企業向け融資が回復していないことが問題である。ECBも指摘しているように、銀行貸出回復には景気回復、銀行監督の透明性向上、そして実効性の高い銀行破綻処理制度の構築が重要となろう。
◆英国経済は内需が牽引して年率3%前後の成長を続けており、注目するべきはインフレ率の過度な上昇を招かずに景気回復を継続できるかである。BOE(英中銀)は英国経済にはまだ余剰生産力があり、インフレが懸念される局面ではないとの見解だが、物価動向に加え、労働市場の需給状況に引き続き注目しているとみられる。
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