サマリー
◆欧州では昨年から住宅価格の高騰が継続しており、英国およびドイツの住宅価格指数は、リーマン・ショック以前の高値を超え、過去最高を更新している。ロンドンやジュネーブなど一部の都市では、足許、各国全体のインデックスを大きく超えた上昇幅も記録しており、住宅バブルの様相も呈している。
◆2月9日にスイスの国民投票にて、移民受け入れに上限を設ける案が50.3%と僅差で可決されたことは、重要な事実として認識すべきであろう。多くの欧州の若者は、住宅価格の高騰により家の購入を諦めざるを得ず、移民の増加による賃金の押し下げ圧力に大きな不満を抱えている。仮に今回の政変があったウクライナがEUに加盟し、EUの労働市場が開放されたとき、さらなる住宅価格の上昇を招くことは容易に想像できる。
◆英国では、わずかな頭金で持ち家購入を可能とする、英国政府の住宅購入支援策である持ち家購入スキーム(Help to buy scheme)が住宅バブルを引き起こしているといわれている。特にその実施第2弾である住宅ローン保証 (Mortgage Guarantee) スキームは、2014年以降、さらなる住宅価格の高騰を引き起こす要因になるとの観測が絶えない。
◆英国中央銀行(BOE)のカーニー総裁は、持ち家購入支援スキームが住宅バブルを引き起こしている直接的な原因とは認めてはいない。ただし貸手である英国の金融機関の間では、同スキームに対しての懸念は大きいようだ。欧州の住宅市場の価格高騰は、単なる投機マネーの流入のほかに、移民政策や住宅購入支援政策等が密接に絡みあうため、多面的な分析が必要となるであろう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
欧州経済見通し 追加関税の影響が顕在化
米国向け輸出が急減、対米通商交渉の行方は依然不透明
2025年06月24日
-
欧州経済見通し 対米通商交渉に一喜一憂
米英合意、米中間の関税引き下げは朗報、EUの交渉は楽観視できず
2025年05月23日
-
1-3月期ユーロ圏GDP 成長ペースは再加速
市場予想を上回る良好な結果、ただし先行きは減速へ
2025年05月01日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
日本経済見通し:2025年4月
足元の「トランプ関税」の動きを踏まえ、実質GDP見通しなどを改訂
2025年04月23日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
-
「反DEI」にいかに立ち向かうか
米国における「DEIバックラッシュ」の展開と日本企業への示唆
2025年05月13日
-
中国:関税115%引き下げ、後は厳しい交渉へ
追加関税による実質GDP押し下げ幅は2.91%→1.10%に縮小
2025年05月13日
日本経済見通し:2025年4月
足元の「トランプ関税」の動きを踏まえ、実質GDP見通しなどを改訂
2025年04月23日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
「反DEI」にいかに立ち向かうか
米国における「DEIバックラッシュ」の展開と日本企業への示唆
2025年05月13日
中国:関税115%引き下げ、後は厳しい交渉へ
追加関税による実質GDP押し下げ幅は2.91%→1.10%に縮小
2025年05月13日