サマリー
◆ユーロ圏の2013年10‐12月期の成長率は前期比+0.3%となり、これでプラス成長が3四半期連続となった。加盟国間でばらつきはあるが、ドイツのみならずフランスやオランダも堅調な成長率となり、また、スペイン、イタリア、ポルトガルという財政懸念国の景気持ち直しも進行中である。足下で輸出の回復は期待したより遅れており、また、失業率は高止まりしているが、消費者と企業の景況感が改善していることからユーロ圏経済は緩やかな回復の継続を見込む。通年の成長率は2013年の-0.4%から2014年は+1.1%とプラスに転じ、2015年は+1.4%を予想する。
◆景気回復の一方で、ユーロ圏の消費者物価上昇率はここ4か月は前年比+1%を下回り、1月は前年比+0.7%に低下した。ECB(欧州中央銀行)は2月の金融政策委員会では追加緩和策を見送ったが、3月にECBスタッフのインフレ予想が下方修正されれば、追加緩和に踏み切ると予想される。可能性が高いのは0.25%の政策金利を小幅に引き下げること、あるいは銀行貸出促進を目的に中央銀行貸出金利をマイナス金利とすることであろう。
◆英国の2013年の成長率は+1.9%と6年ぶりの高成長となった。発射台が高くなったことを反映させ、2014年の成長率予想を+2.1%から+2.4%に上方修正する。雇用改善が進み、住宅取引が活発であることを追い風に、個人消費が牽引すると見込む。一方で、輸入物価低下と賃金上昇率の伸び悩みを背景に、消費者物価上昇率は1月は+1.9%とインフレターゲットの中心値を下回った。BOE(英中銀)は現状の英国経済はまだ余剰生産能力があるとして、インフレは懸念材料ではなく、金融緩和政策を継続するとの方針を示している。景気加速と低インフレの中で金融緩和政策の出口のタイミングを探るBOEの姿は米国のFRBに重なるが、BOEの利上げ開始のタイミングは2015年初めになるのではないかとみている。
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