サマリー
◆ユーロ圏では企業と消費者の景況感が改善している一方、それが実体経済上の数値の回復になかなか反映されない状態が半年近く続いていたが、11月の鉱工業生産と小売売上高は前月比で大きく伸び、前年比でもプラスの伸びを回復した。続く12月の景況感も総じて改善傾向にあり、2014年のユーロ圏が緩やかな景気持ち直しを続けるとの予想を支持する動きとなっている。2014年のGDP成長率は+0.9%とプラスに転じよう。
◆各国の経済成長率には依然としてばらつきが大きく、2014年は強いドイツと弱いフランスの対比が際立つことが予想される。フランスのオランド大統領は、2014年初めにドイツが行ってきたような企業の税・社会保障負担を軽減し、歳出を削減することで経済力を高める方針を打ち出してきたが、これをどのような形で遂行できるのかまだまだ不透明である。
◆2013年12月にEUとIMFの財政支援から「卒業」することを宣言したアイルランドが、1月に発行した国債には国外から旺盛な需要がみられた。同国のみならず、ユーロ圏の財政懸念国に分類されてきた国々の国債利回りは低下傾向にあり、これが財政再建を助ける好循環となっている。ただ、2014年には銀行の資産査定とストレステストが実施され、中堅銀行の中には公的資本による資本増強が必要な銀行が出てくると予想される。また、ギリシャは追加財政支援が必要になるとの観測がくすぶっている。このようなイベントが国債市場のマインドを悪化させる可能性があり、過度な楽観は禁物であろう。
◆英国経済は2013年のGDP統計が上方修正され、また12月の小売売上も好調だったことから、2013年は+1.8%成長と従来予想の+1.4%を大きく上回ったと推測される。2014年も個人消費主導で+2.1%の成長を見込んでいるが、これは2013年に伸び悩みがみられた賃金上昇率が緩やかに改善することが条件となる。就業者数が順調に増加しているにもかかわらず、2013年の賃金上昇率は伸び悩んだ。他方で12月の消費者物価上昇率は+2.0%まで低下し、また輸入物価も低下傾向にあるため、物価動向はしばらくBOE(英中銀)の金融緩和政策の阻害要因とはならないと見込まれる。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
同じカテゴリの最新レポート
-
4-6月期ユーロ圏GDP かろうじてプラス成長
ドイツ、イタリアがマイナス成長転換も、好調スペインが下支え
2025年07月31日
-
ドイツ経済低迷の背景と、低迷脱却に向けた政策転換
『大和総研調査季報』2025年夏季号(Vol.59)掲載
2025年07月24日
-
欧州経済見通し 輸出環境が一段と悪化
米国の追加関税率は30%に引き上げへ、ユーロ高も輸出の重荷に
2025年07月22日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
第225回日本経済予測(改訂版)
人口減少下の日本、持続的成長への道筋①成長力強化、②社会保障制度改革、③財政健全化、を検証
2025年06月09日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
「トランプ2.0」、外国企業への「報復課税」?
Section 899(案)、米国に投資する日本企業にもダメージの可能性有
2025年06月13日
-
日本経済見通し:2025年5月
経済見通しを改訂/景気回復を見込むもトランプ関税などに警戒
2025年05月23日
-
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
第225回日本経済予測(改訂版)
人口減少下の日本、持続的成長への道筋①成長力強化、②社会保障制度改革、③財政健全化、を検証
2025年06月09日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
「トランプ2.0」、外国企業への「報復課税」?
Section 899(案)、米国に投資する日本企業にもダメージの可能性有
2025年06月13日
日本経済見通し:2025年5月
経済見通しを改訂/景気回復を見込むもトランプ関税などに警戒
2025年05月23日
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日