サマリー
◆2012年10-12月期の成長率は、ユーロ圏が前期比-0.6%、英国が同-0.3%とともに落ち込んだ。この時期は世界的に需要減退が見られ、双方とも輸出が落ち込み、投資と在庫の調整が進んだ。また、個人消費も振るわなかった。
◆欧州の企業景況感は、輸出見通しの改善などに牽引され、2012年10月頃を起点として改善傾向が見られ、2013年半ばの景気回復を示唆していると考えられる。ただ、直近の指標で国ごとの差異が再び目立ってきている。ドイツでは強気の景況感が維持されている一方、フランス、イタリアなどで景況感の軟化が目立つ。後者は財政健全化という課題を抱え、失業率上昇に歯止めがかかっていない国々である。財政健全化のみに力点を置くのではなく、成長と雇用創出も推進するべきであるとの意見が徐々に浸透してきているが、雇用改善などの成果にはまだつながっていない。
◆しかも、このところ景気回復期待に水を差すような政治の動きが目立つ。2月末のイタリア総選挙では明確な勝者が存在せず、次期政権がいつ、どのような形で成立するのか、見通しがまだ立たない。また、3月15、16日のEU首脳会議で合意されたキプロス支援は、全預金者に負担共有を求める内容が盛り込まれ、大きな批判に直面している。ユーロ圏の金融・財政危機対応が依然として試行錯誤の途上にあることが改めて印象付けられたわけだが、これらの動きが投資家や預金者の信頼失墜につながれば、欧州の景気回復シナリオにも黄色信号がともることになろう。
◆英国はユーロ圏危機とは一線を画しているはずだが、ここでも政治リスクの懸念がある。すなわち、キャメロン首相とオズボーン財務相の財政緊縮政策を最優先とする路線が、景気見通しを暗くしている。共通通貨という制約のない英国が、緊縮財政路線を緩和し、景気対策にも配慮することで、欧州の景気回復の先鞭をつけることが期待されるのだが、次期総選挙が視野に入る2014年にならないと難しいのではないかと予想される。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
同じカテゴリの最新レポート
-
4-6月期ユーロ圏GDP かろうじてプラス成長
ドイツ、イタリアがマイナス成長転換も、好調スペインが下支え
2025年07月31日
-
ドイツ経済低迷の背景と、低迷脱却に向けた政策転換
『大和総研調査季報』2025年夏季号(Vol.59)掲載
2025年07月24日
-
欧州経済見通し 輸出環境が一段と悪化
米国の追加関税率は30%に引き上げへ、ユーロ高も輸出の重荷に
2025年07月22日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
第225回日本経済予測(改訂版)
人口減少下の日本、持続的成長への道筋①成長力強化、②社会保障制度改革、③財政健全化、を検証
2025年06月09日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
「トランプ2.0」、外国企業への「報復課税」?
Section 899(案)、米国に投資する日本企業にもダメージの可能性有
2025年06月13日
-
日本経済見通し:2025年5月
経済見通しを改訂/景気回復を見込むもトランプ関税などに警戒
2025年05月23日
-
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
第225回日本経済予測(改訂版)
人口減少下の日本、持続的成長への道筋①成長力強化、②社会保障制度改革、③財政健全化、を検証
2025年06月09日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
「トランプ2.0」、外国企業への「報復課税」?
Section 899(案)、米国に投資する日本企業にもダメージの可能性有
2025年06月13日
日本経済見通し:2025年5月
経済見通しを改訂/景気回復を見込むもトランプ関税などに警戒
2025年05月23日
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日