欧州経済見通し 緊縮財政による需要減退深刻化

ドイツを除き景況感が悪化

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2012年05月18日

サマリー

◆ユーロ圏の2012年1-3月期のGDP成長率は、前期比マイナス成長との予想に反してゼロ成長で、リセッション入りは免れた。とはいえ、財政困難国を中心に失業率の上昇傾向に歯止めがかかっておらず、また景況感指数は総じて4月以降悪化している。とりわけイタリア、スペインの景気悪化傾向が気がかりである。

◆5月6日の2つの総選挙は予想以上に大きなインパクトを持つイベントとなった。ギリシャ総選挙では反緊縮財政派が大躍進した結果、組閣ができず、6月17日に再選挙が行われることになった。再選挙では反緊縮財政派が議席を増やす可能性が高まっている。そうなれば緊縮財政政策の放棄が、ギリシャのデフォルト、ユーロ圏からの離脱などへと発展し、他国へ負の連鎖が止まらなくなるとの懸念が急速に高まっている。この懸念は欧州株と通貨ユーロにとどまらず、世界的な株価の調整材料となり、逆に安全資産と目される米英独日の国債利回り低下をもたらした。

◆フランス大統領選挙では、事前予想通りオランド候補が勝利して5月15日に大統領に就任した。経済政策に成長促進と雇用創出の観点を盛り込むべきと主張するフランス大統領の誕生を機に、ユーロ圏の経済政策が財政再建一辺倒から軌道修正される動きがようやく始まった。5月23日に急遽設定されたEU首脳会議は経済成長をテーマに話し合いが行われ、6月28、29日のEU首脳会議で成長協定を打ち出すことを目指すと見込まれる。

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