欧州経済見通し でこぼこ道が続く

政治の季節到来で注目はスペイン、イタリア、フランス、ギリシャ

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2012年04月19日

サマリー

◆ユーロ圏経済は2011年10-12月期から2四半期連続で前期比マイナス成長となったと推測され、マイルドなリセッションに陥ったとみられる。年末から改善傾向にあったマインド指数のいくつかは3月に悪化に転じたが、ユーロ圏を牽引しているドイツの景気判断は緩やかながら改善を続けている。欧州外の需要見通しが堅調なことが景気の下支え要因になると予想される。

◆ただ、金融市場の懸念は消えていない。ギリシャ支援第2弾は実行に移されたが、各国の財政再建の実現可能性に対する疑念が強いためである。特にスペイン、イタリアの財政再建が景気悪化で計画よりも遅れることが判明したことで、両国の国債利回りが改めて上昇してしまっている。ユーロ圏各国は財政再建は不可避と表明しているものの、その政策の実効性に関する信頼を市場と国民の双方から獲得することは容易ではない。なお、5月6日にはフランス大統領選挙の決選投票とギリシャの総選挙が行われる。ユーロ圏の財政支援体制と、財政統合を目指す方針を覆す結果にはならないと予想するが、短期的な撹乱要因となる可能性はあるだろう。

◆英国経済も財政再建を優先する政府のもとで景気が停滞している。ユーロ圏に比べ企業景況感が先行きに対して楽観的になりつつあり、就業者数も緩やかに増加傾向にある。ただ、増税効果剥落による消費者物価低下は原油高で一部相殺され、賃金上昇率が低下していることもあって家計の購買力は伸びていない。英国経済の回復は力強さに欠けたものとなり、財政政策による景気てこ入れが期待される状況が続こう。

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