欧州経済見通し ユーロ圏外の需要回復に期待

ギリシャ支援決定後の注目イベントはギリシャとフランスの選挙

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2012年03月19日

サマリー

◆ギリシャに対する第2弾支援がようやく承認され、4年間で1,300億ユーロの財政支援が実行されることになった。これでギリシャが突然債務不履行に陥るリスクは後退したが、ギリシャが約束した財政再建計画は非常に厳しい内容である。一連の構造改革や国有企業の民営化を含む財政再建策を実行できるか、最初の試金石は4月下旬か5月上旬と目されているギリシャ総選挙となる。また、4月22日にはフランス大統領選挙が行われる。決着は5月6日の決選投票に持ち越され、サルコジ候補とオランド候補の一騎打ちとなることが予想される。オランド大統領となった場合も、「EU統合推進、財政再建推進」の基本路線は変わらないとみるが、就任当初の数ヶ月は路線が定まらず、混乱するリスクは見ておいたほうが良いかもしれない。

◆ユーロ圏経済は10-12月期に10四半期ぶりに前期比マイナス成長となったが、その原因の一つはユーロ圏債務懸念の深刻化を背景とする銀行の資金繰り難にあったと考えられる。ECBによる2度の3年オペにより、金融システムと金融市場の緊張感は後退しつつある。また、ドイツ企業の景況感改善は11月以来4ヶ月連続となった。ユーロ圏以外の需要が徐々に回復していると見込まれる。ユーロ圏経済全体としては財政緊縮策による内需減退が見込まれるが、ドイツなどの輸出持ち直しで、2012年の経済成長率は小幅のマイナス成長にとどまろう。

◆英国経済は10-12月期に投資が大きく落ち込んで前期比マイナス成長となった。ただし、個人消費は5四半期ぶりに前期比プラス成長となり、また1月の小売売上高も堅調に伸びている。インフレ率の低下傾向が鮮明になってきたことと、低金利が継続していることがプラス効果を及ぼしていると期待される一方、失業率は上昇傾向にあり、賃金上昇率も一段と伸びが鈍化し、所得環境はむしろ悪化している。財政再建が優先されるなかで、中央銀行は量的緩和政策を継続しているものの、英国の景気回復は遅々とした速度でしか進まないと予想される。

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