2012年の欧州経済見通し

ユーロ圏はリセッション入りの可能性高まる

RSS

2011年12月21日

サマリー

◆12月8、9日のEU首脳会議は、ユーロ圏17カ国に非ユーロ圏の9カ国も加わり、各国の財政状況の監視強化で合意した。財政危機の抜本的な解決策と考えられる財政統合実現へ向けた一歩である。ただし、金融市場の懸念を打ち消すために用意された財政支援策は、その規模と機動性の双方において力不足である。クリスマス休暇が視野に入っている欧州市場は、失望しつつも急落はしていないが、年明けには次の緊迫局面が到来しよう。ドラギECB総裁も警告しているように、2012年年初には国債、銀行債、資産担保証券の大償還が控えているためである。金融市場に強く背中を押され、ユーロ圏諸国は1-3月期に財政統合の推進加速を決め、ECBとIMFによる財政バックアップが実現すると見ているが、それまで改めて紆余曲折を経ることが予想される。

◆この状況下でユーロ圏経済は10-12月期に10四半期ぶりに前期比マイナス成長に転じると予想される。ユーロ圏財政危機に関する先行き不透明感は企業と消費者の不安を高めた。また、ユーロ圏の景気停滞や銀行部門の収縮が、世界経済の成長抑制要因となることへの警戒感も急速に高まっている。12月のEU首脳会議の決定事項がマインド改善材料とならなかったこともあり、2012年1-3月期もマイナス成長が継続する可能性が出てきている。ECBは12月に0.25%の利下げを実施。さらに銀行の資金調達のハードルを下げるべく、担保資産要件の緩和や3年という長期オペの導入も決定し、銀行に対して「最後の貸し手」としての機能を強めている。どのような方法を採るかは議論があろうが、ユーロ圏加盟国に対しても「最後の貸し手」となることが必要であり、その最終決断の時期が迫っていると考える。リスクシナリオはこの決断の先送りが続くことで、その場合には2012年を通じてマイナス成長から脱することができなくなるだろう。

このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。