サマリー
◆10月以降もユーロ圏の景況感は悪化傾向にある。とりわけユーロ圏債務問題に関して解決の道筋が見えないことがマインド悪化要因となっている。債券市場ではイタリア、スペイン、フランス、ベルギーの国債利回りが軒並み上昇しており、ドイツ国債との利回り格差が急拡大している。金利上昇は財政赤字削減を難しくする要因であり、追加の財政赤字削減策が必要となれば、内需を一段と冷やすことにつながろう。また、国債利回り上昇(国債価格下落)は、自己資本増強を迫られている銀行にとって痛手であり、銀行貸出の抑制が景気を冷やすことが懸念される。債務問題解決に向けて前進がなければ、ユーロ圏全体としてマイナス成長に陥る可能性を否定できない。
◆ユーロ圏の財政・金融問題解決への取り組みは、銀行の自己資本増強、ギリシャの債務減免措置など一歩踏み込んだ対応に移ろうとしているが、支援のための財源確保が不十分で、危機伝播に対する防波堤の役目を果たせていない。この状況下でECB(欧州中央銀行)の役割拡大への期待がますます高まっている。ECBは11月に0.25%の利下げを実施したが、追加の金融緩和に加え、財政懸念国への支援により積極的に関与することが期待されている。EU条約が禁じている、国債引き受けの実現は困難と考えられるが、以前フランスが提案したEFSF(欧州金融安定化機構)を銀行に転換し、ECBから資金を調達する提案に関しては再検討の余地があると考える。11月29日のユーロ圏財務相会合、12月9日のEU首脳会議が今後の注目日程となろう。
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