サマリー
◆ASEAN(東南アジア諸国連合)は、日本にとって引き続き身近な存在ではあるが、2000年代に入って以降、ASEANの貿易相手国は、大きく変化してきている。1990年代は、ASEANとの貿易の主役は日本であったが、2000年代に入ってからは、中国が急速に存在感を高めている。
◆中国がASEANとの関係を深めているのは、ASEANは、中国にとって、(1)安価な労働力調達先、(2)自国製品の売り込み先、(3)物流ルートの確保先、(4)資源・エネルギーの確保先、(5)「一帯一路」構想における投資対象地域などであることにより、極めて魅力的だからである。
◆中国は、ASEAN加盟国毎の特性を考慮した戦略を練っており、たとえば、地理的特性に鑑みた物流ルート確保では、ミャンマー、ラオス、カンボジアなどで、大規模な鉄道、道路、港湾整備のプロジェクトを実施、資源・エネルギー確保では、ラオス、ミャンマーとの取引が多い。
◆賃金格差、資源・エネルギーや物流ルート確保、そして、より大きく言えば「一帯一路」構想における投資対象地域として、中国にとって、ASEAN各国との関係を深めることのメリットは、引き続き大きい。米中貿易摩擦回避の動きと相まって、中国とASEANとの貿易関係は更なる深化を遂げていくことになるだろう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
なぜベトナムは「不平等協定」を結ぶのか
米国・ベトナムの「ディール」を解明する
2025年08月14日
-
米国抜きの連携拡大~CPTPPのEU拡大が意味すること
「反米色」を排除しながら自由貿易の枠組みを強化、アジアに恩恵も
2025年07月23日
-
インド経済は堅調か?2025年度Q2以降の見通し
個人消費とインフラ投資がけん引役。利下げが都市部の消費を刺激へ
2025年07月07日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
-
2025年ジャクソンホール会議の注目点は?
①利下げ再開の可能性示唆、②金融政策枠組みの見直し
2025年08月20日
-
既に始まった生成AIによる仕事の地殻変動
静かに進む、ホワイトカラー雇用の構造変化
2025年08月04日
-
米雇用者数の下方修正をいかに解釈するか
2025年7月米雇用統計:素直に雇用環境の悪化を警戒すべき
2025年08月04日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
2025年ジャクソンホール会議の注目点は?
①利下げ再開の可能性示唆、②金融政策枠組みの見直し
2025年08月20日
既に始まった生成AIによる仕事の地殻変動
静かに進む、ホワイトカラー雇用の構造変化
2025年08月04日
米雇用者数の下方修正をいかに解釈するか
2025年7月米雇用統計:素直に雇用環境の悪化を警戒すべき
2025年08月04日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日