2021年のASEAN経済の行方は?

明暗が分かれるASEAN経済—明はベトナム、暗はタイ

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2020年10月07日

  • 古橋 櫻子

サマリー

◆2020年4~6月期は、新型コロナウイルス感染症の抑制を目的としたロックダウン(的な措置)の影響が本格的に表れた。内外需要が急減し、ベトナムを除くASEAN5各国(インドネシア、マレーシア、フィリピン、タイ)はマイナス成長に陥った。各国の実質GDP成長率を産業別に比較したところ、製造業や観光業の落ち込みが顕著である。

◆フィリピンとインドネシアを中心に、感染拡大は未だ収まっていない。しかし、ロックダウン(的な措置)が経済に与える悪影響は大きく、それに耐えられない両国は、感染拡大が収まらない中で経済活動を再開させている。財政は悪化を余儀なくされるも、多様な経済対策を打ち出すことで景気の下支えを図っている。

◆経済活動の再開により、今後は輸出や投資などの改善が期待される。ただし、コロナウイルス感染症は流行を繰り返す懸念があり、海外景気の先行きも不透明なため、経済活動の水準が元に戻るまでには時間を要すると考える。中でも、タイなど観光業への依存度が高い国の景気回復ペースは他国よりも緩やかだろう。

◆一方、いち早く感染の抑え込みに成功し、ASEANで最も早く経済活動の正常化に踏み切ったベトナムの回復力は強いと予想する。企業・家計向けの給付金支援を迅速に実施し、企業や家計の経済的損失も最低限に抑えている。政府は今後大規模な公共事業を実行することで雇用・所得環境の改善を目指す方針であり、景気回復は力強さを増していくだろう。

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