サマリー
◆2020年は通信の大容量・高速化を可能にし、モバイル端末に限らず電化製品や医療機器などをネットワークにつなげる“5G”(第5世代移動通信システム)の導入が世界中で本格化する。ASEAN諸国は5G分野の開発で先頭を走る中国への依存度を高めている。中でも、通信機器最大手の華為技術(以下、ファーウェイ)の製品は競合製品と比べ安価かつ最新技術が搭載されていることから、中核設備のサプライヤーなどに採用されている。
◆ただし、中国企業がASEANにおける5G分野を席巻することで、同地域内の膨大な機密情報やデータが中国政府に把握される恐れがあることは否定できない。米国は安全保障上の問題から、ファーウェイの製品に対し禁輸措置を発動し、他国にも同様の対応を求めている。しかし、早期の5G導入は経済発展を促すチャンスと捉えるASEAN諸国の首脳は、ファーウェイとの関係をむしろ強化する意向を表明している。
◆ASEAN各国が最先端技術の活用に関心を寄せる背景には、将来5GがASEANにもたらす経済効果が大きいと期待されている点がある。さらに、5Gの活用で創出された新しいサービスやビジネスが多様な社会問題の解決に寄与する点でも注目されている。ファーウェイとの協調路線の強化や新型肺炎の拡大による影響への不安はあるが、今後ASEANが5Gの導入によって経済成長への段階を着実に踏み進めていけるのか、注視するべきだろう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
李在明氏の「K-イニシアティブ」を解明する
大統領選で一歩リードしている李在明氏は、韓国経済と日韓関係をどう変えるのか
2025年06月02日
-
カシミール問題を巡る印パの内情と経済への影響
インドは米国の介入を快く思わないが、経済にとっては都合が良い
2025年05月23日
-
尹大統領の罷免決定、不動産問題が選挙のカギに
賃借人保護の不動産政策を支持する「共に民主党」の李在明氏が、大統領選挙で一歩リードか
2025年04月24日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
「相互関税」による日本の実質GDPへの影響は最大で▲1.8%
日本に対する相互関税率は24%と想定外に高い水準
2025年04月03日
-
「相互関税」を受け、日米欧中の経済見通しを下方修正
2025年の実質GDP成長率見通しを0.4~0.6%pt引き下げ
2025年04月04日
-
米国による25%の自動車関税引き上げが日本経済に与える影響
日本の実質GDPを0.36%押し下げる可能性
2025年03月27日
-
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日
-
日本経済見通し:2025年3月
トランプ関税で不確実性高まる中、25年の春闘賃上げ率は前年超えへ
2025年03月24日
「相互関税」による日本の実質GDPへの影響は最大で▲1.8%
日本に対する相互関税率は24%と想定外に高い水準
2025年04月03日
「相互関税」を受け、日米欧中の経済見通しを下方修正
2025年の実質GDP成長率見通しを0.4~0.6%pt引き下げ
2025年04月04日
米国による25%の自動車関税引き上げが日本経済に与える影響
日本の実質GDPを0.36%押し下げる可能性
2025年03月27日
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日
日本経済見通し:2025年3月
トランプ関税で不確実性高まる中、25年の春闘賃上げ率は前年超えへ
2025年03月24日