中国に傾倒するASEANの5G導入の行方

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2020年03月12日

  • 古橋 櫻子

サマリー

◆2020年は通信の大容量・高速化を可能にし、モバイル端末に限らず電化製品や医療機器などをネットワークにつなげる“5G”(第5世代移動通信システム)の導入が世界中で本格化する。ASEAN諸国は5G分野の開発で先頭を走る中国への依存度を高めている。中でも、通信機器最大手の華為技術(以下、ファーウェイ)の製品は競合製品と比べ安価かつ最新技術が搭載されていることから、中核設備のサプライヤーなどに採用されている。

◆ただし、中国企業がASEANにおける5G分野を席巻することで、同地域内の膨大な機密情報やデータが中国政府に把握される恐れがあることは否定できない。米国は安全保障上の問題から、ファーウェイの製品に対し禁輸措置を発動し、他国にも同様の対応を求めている。しかし、早期の5G導入は経済発展を促すチャンスと捉えるASEAN諸国の首脳は、ファーウェイとの関係をむしろ強化する意向を表明している。

◆ASEAN各国が最先端技術の活用に関心を寄せる背景には、将来5GがASEANにもたらす経済効果が大きいと期待されている点がある。さらに、5Gの活用で創出された新しいサービスやビジネスが多様な社会問題の解決に寄与する点でも注目されている。ファーウェイとの協調路線の強化や新型肺炎の拡大による影響への不安はあるが、今後ASEANが5Gの導入によって経済成長への段階を着実に踏み進めていけるのか、注視するべきだろう。

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