アセアンから見える中国

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2019年06月13日

  • 佐藤 清一郎

サマリー

◆アセアンと中国の経済関係は、年々、深まりを見せている。アジア開発銀行のデータによれば、アセアンから中国への輸出とアセアンの中国からの輸入を合計した総貿易額は、1990年ではわずか74億ドルであったが、2016年では、同3,672億ドルと、約50倍に拡大した。貿易拡大のペースは、中国のWTO(世界貿易機関)加盟(2001年12月)、中国とアセアンのFTA(自由貿易協定)署名(2002年11月)等により、2000年代に入り加速している。

◆貿易拡大の背景には、貿易推進が双方のメリットになることがある。すなわち、アセアン側にすれば、天然資源や消費財そして部品等の輸出先としての中国のメリットは大きい。一方で中国側にすれば、アセアンの安価な人件費、アセアンの天然ガスや銅等の天然資源、潜在力あるアセアン国内市場、「一帯一路」構想の実現、米中貿易摩擦回避先等としてのアセアンのメリットは大きい。

◆アセアンの中で、2010年以降、中国との総貿易額の拡大が顕著なのが、ベトナムを除けば、カンボジア、ラオス、ミャンマーである。これら3ヶ国と中国との貿易特化係数を見ると、ラオスとミャンマーが比較的類似した動きとなっている一方で、カンボジアは、やや異なったものとなっている。双方の違いを生み出している大きな要因は、天然資源の有無である。ミャンマーは天然ガス、ラオスは銅が重要な輸出品となっているが、カンボジアでは、天然資源輸出は、ほとんどない。

◆経済発展段階が初期のカンボジア、ラオス、ミャンマーからすれば、中国の資金力は、とても魅力的でありぜひとも活用したいところであるが、一般的に、中国からの海外直接投資は、中国の国益のみを重視したものが多く、自国利益の観点を十分に検討した上での対応が望まれる。

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