ミャンマー経済の現状

チャット減価圧力続く

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2018年08月30日

  • 佐藤 清一郎

サマリー

◆ミャンマーは、2011年の軍事政権からの民政移管後、概ね順調な経済拡大を続けている。特に、2013年、2014年は、石油ガス田開発、通信インフラ整備、国際空港ターミナル新設等の大型案件による大規模な設備投資に支えられ、年8%を超える高成長を達成した。

◆その後、これらの大型案件は一段落したが、 オフィス、レジデンス、ショッピングセンター、ホテルなどでの建設需要、輸出向け衣料品、鞄などを製造する軽工業等に支えられ、年6~7%程度の成長となっている。今後についても、ヤンゴン駅国鉄駅舎跡地開発、軍事博物館跡地開発、ティラワ経済特別区開発等を中心に、経済は順調な拡大が継続すると見込まれる。

◆概ね順調な成長の裏側で、自国通貨であるチャットは減価方向を辿っている。その背景には、(1)成長に必要な原材料や資本財を国内で調達することが難しく、ほとんどを輸入に頼っていることによる貿易赤字拡大、(2)海外企業を中心に生産性に見合わない賃金引き上げを行った結果としてのコストプッシュインフレ、(3)成長スピードに相応な国内の供給力が不足していることによるディマンドプルインフレ等がある。

◆為替価値の安定には、競争力向上に裏付けされたマクロインバランスの是正が求められるが、現状のミャンマー経済を考えた場合、時間を要する課題となるため、通貨チャットの減価圧力は継続することになる。

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