「トルコ危機」をめぐる一考察

本当の禁じ手は利上げか資本規制か

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2018年08月16日

  • 児玉 卓

サマリー

◆「トルコ危機」は長期化必至のようにみえる。通貨の下落を起点として、実体経済のハードランディングに進んでいく懸念がある。金利引き上げを忌み嫌うエルドアン大統領が中央銀行の独立性をあからさまに蔑ろにしていることも問題だが、金利引き上げに代わる通貨防衛策として、資本移動規制を志向することはきわめて危険である。

◆資本規制は、基本的に海外に資本が逃げる道を封じることを目的としたものだが、逃げ道がないかもしれないと感じた外国資本は、そもそもトルコに入ってこなくなる。恒常的な経常赤字国トルコが如何にそれをファイナンスするかという問題が、資本規制によって深刻化するのである。起こり得ることは、高騰したリスクプレミアムを相殺するに足る大幅なトルコ・リラの下落、そうでなければトルコが海外からの資本流入を必要としない経済になることである。つまり、経常収支の赤字を解消するのである。それこそが、実体経済ハードランディングの道である。アジア通貨危機下のマレーシアは、その格好のレッスンを提供している。

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