アセアンの輸入構造

中国シフト続く

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2017年06月15日

  • 佐藤 清一郎

サマリー

◆アセアンと日本の直接的な貿易関係は薄れる一方で、アセアンと中国との貿易関係は深まる方向にある。アセアンの輸入全体に占める中国からの割合は、1990年に2.9%にすぎなかったが、2015年では21.8%にまで拡大してきている。こうした背景の一つには、コスト削減に向けて資源の最適配分を目指そうとする日本企業のアジア戦略がある。


◆2000年代初頭より中国進出を加速させた日本企業は、その後の中国の人件費上昇に伴って価格競争力低下に直面したため、更なるコスト削減を求め、アセアン進出を決定した。進出方法は、中国からの工場の一部移転、労働集約型生産工程を中心とした生産委託などである。これに伴い、原材料や部品の中国からの輸入が増加することになり、アセアンの中国からの輸入割合は上昇してきている。


◆国別に見ると、中国からの輸入割合が高いのは、ミャンマー、ベトナムである。ミャンマーは経済制裁下での関係が続いてきたこと、ベトナムは、携帯電話の組み立て拠点となっていることが主な理由である。


◆中国としては、依然として安価なアセアンの労働力やアセアン域内に張り巡らされた生産ネットワークを活用するメリットは、引き続き存在するため、中国からのアセアンへの投資はまだ継続し、結果、中国からの輸入も増加方向となると思われる。


◆ただ、組み立てに必要な部品や原材料がアセアン域内で調達できる体制ができ上がってくれば、中国からの輸入をアセアン域内からの輸入に代替してくる可能性は高いため、今後の、アセアン域内貿易割合の変化は、注目すべき点の一つである。

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