サマリー
◆2011年の民政移管とともに始まったミャンマーのマクロ経済政策改革においては、管理フロート制が導入され、為替取引に対する規制が緩和されて、貿易自由化が進んだ。それに伴って貿易赤字が拡大し、チャット(ミャンマーの通貨)レートの減価が進んだが、貿易自由化の後に貿易赤字が拡大することは必ずしも問題ではなく、それに伴ってチャットレートが減価することは、管理フロート制において想定されていることである。したがって、貿易赤字の拡大のみによるチャットレートの減価であれば、マクロ経済政策により対応する必要があるということにはならない。
◆他方、軍政下では、財政赤字の中央銀行によるファイナンスがインフレの主要因となっていたため、金融政策を財政から分離することが目指された。また、中央銀行の金融政策の余地を広げることを目的の一つとして、銀行業に対する規制が緩和された。その結果、市中銀行の預金と貸出の増加による広義の貨幣供給量の増加が起こり、インフレの主要因は市中銀行の預金と貸出の増加にシフトしている。
◆貨幣供給量の増加に歯止めをかけるための金融政策として、中銀預金や国債の入札が開始されたが、市中銀行の金利が規制により固定されているために、十分な金利の引上げにつながっていない。したがって、規制の見直し等により市中銀行の金利の引上げに取り組む必要があるが、それに伴い不良債権が急増して金融システムが不安定化することは、回避する必要がある。まず銀行監督を強化し、金融システムを金利引上げに耐えられるものとする必要がある。
◆管理フロート制に移行した後のUSドルのチャットに対する増価率は、年率換算すると国債の金利や市中銀行の預金金利を上回っており、チャット建て金利が低すぎることは、為替投機の温床にもなっている。USドル資産の保有が進んで、為替投機によるチャットレートの減価が起こりやすくなることを避けるためにも、金利引上げが優先課題である。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
ASEAN5、消費格差の原因は?
外需と雇用・所得、金融環境、財政支援と家計バランスシート
2026年08月31日
-
インド:モディ政権の産業政策は、「質の高い雇用」を生みだせるのか?
量的改善から安定性・生産性・所得を伴う雇用への転換が問われる
2026年07月14日
-
AI・データセンターブームの恩恵を受けているのはどの国か?
インドネシアを除くASEAN5はブームの恩恵。インドはまだブームに乗り切れず
2026年06月22日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
2026年ジャクソンホール会議の注目点は?
ウォーシュ議長はインフレ抑止に対する姿勢を明確に打ち出すか
2026年08月20日
-
“TACO”指数で読む トランプ大統領の“TACO”化の兆し
市場と世論が映す政策転換のサイン
2026年08月13日
-
高市政権誕生後の長期金利をどうみるか
2035年に3.3~4.0%程度で、海外保有拡大で更なる上昇も
2026年08月12日
-
第230回日本経済予測
円安・金利上昇下の日本経済と成長力強化への課題①AI活用による経済への影響、②資産市場と経済の好循環、を検証
2026年08月21日
-
GPIFガバナンス改革の功罪と課題解決の道
目先の運用見直しの可能性は低いが、硬直的運用への対応が課題
2026年08月13日
2026年ジャクソンホール会議の注目点は?
ウォーシュ議長はインフレ抑止に対する姿勢を明確に打ち出すか
2026年08月20日
“TACO”指数で読む トランプ大統領の“TACO”化の兆し
市場と世論が映す政策転換のサイン
2026年08月13日
高市政権誕生後の長期金利をどうみるか
2035年に3.3~4.0%程度で、海外保有拡大で更なる上昇も
2026年08月12日
第230回日本経済予測
円安・金利上昇下の日本経済と成長力強化への課題①AI活用による経済への影響、②資産市場と経済の好循環、を検証
2026年08月21日
GPIFガバナンス改革の功罪と課題解決の道
目先の運用見直しの可能性は低いが、硬直的運用への対応が課題
2026年08月13日

