ミャンマー新政権樹立から1年

経済・産業政策の具現化が課題

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2017年03月16日

  • 佐藤 清一郎

サマリー

◆昨年3月、国民の多大な期待を受け成立した国民民主連盟(NLD)政権。過去1年の成果を振り返ると、やはり一番衝撃的だったのは、昨年10月の米国の経済制裁全面解除である。この措置により、ミャンマーへのビジネス自由度は各段に高まり、外国人のミャンマーに対する見方も大幅に変わった。


◆こうした一方で、これ以外で成果を探そうとするとかなり難しい。軍との関係では、2008年の軍人優位の憲法の下、国軍は依然として国政に強い影響力を維持している。少数民族問題では、「21世紀ピンロン連邦和平会議」開催など解決に向けた仕組み作りは行われているものの、和平に向け目立った進展は見られない。経済政策や投資政策に関しては、大まかな内容は公表されているが、その具体的な実施方法がいまだ不明確である。


◆過去1年を振り返り、あまり成果がでていないNLD政権だが、ミャンマー国民のNLD政権への不満の声はあまり聞かれない。自らの力で勝ち取った民主主義に大きな満足を覚えていること、改革は時間を要すると思っていること、忍耐強い国民性などが主な理由と考えられるが、今後、やはり、経済的豊かさも伴うような政策が実行されなければ、国民は不満を持つようになってくるかもしれない。


◆ミャンマー政府は、民主主義が自動的に経済成長を保障するものではないことを再認識するべきである。経済政策の失敗による景気減速や所得格差拡大は、国民の不満を招き、政権基盤を危うくする可能性もあるため、今後は、適切な経済・産業政策の具現化に向けて注力していくべきである。

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