ASEAN、中国のFTAと自動車・自動車部品貿易②

貿易自由化において重要となる中国の乗用自動車の関税の取り扱い

RSS

2017年02月02日

  • 金子 実

サマリー

◆ASEANと中国の間では、ASEAN-中国自由貿易地域(ACFTA)による関税引き下げが2005年から始められ、自動車部品の関税引き下げが進んだ。


◆その結果、ASEAN-中国間の自動車部品の貿易が拡大したが、ASEANの自動車生産における中国からの輸入部品の利用度が、中国の自動車生産におけるASEANからの輸入部品の利用度を大きく超えて高まっており、バランスを欠いた貿易の拡大となっている。


◆現在、東アジアの貿易自由化をさらに進めるため、ASEAN加盟国に中国のみならず日本や韓国なども加わって、東アジア地域包括的経済連携(RCEP)についての交渉が行われている。


◆自動車関連では、ACFTAでほとんど貿易自由化の進んでいない乗用自動車の取り扱いが重要となるが、ACFTAによる自動車部品の貿易の拡大がバランスを欠いたものであったこともあり、乗用自動車の貿易自由化が近い将来進む可能性はあまり高くないと思われる。


◆したがって、日本の自動車メーカーは、これまで通り、ASEANや中国における乗用自動車の現地生産を進めることが必要と思われる。


◆他方、中国は今日では世界最大の乗用自動車生産国であり、貿易自由化率を固定する効果も持つFTAについては、腰を据えた交渉が期待される。

このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。

同じカテゴリの最新レポート