サマリー
◆ミャンマーでは、2011年の民主化以降、通貨チャットの対ドルレートが減価方向を辿っている。2012年末1ドル=857チャットだったが、2015年に大きく減価して2015年末1,309チャットとなった。その後、2016年半ばにかけて、やや増価する局面も見られたが、結局、2016年末1ドル=1,365チャットとなった。
◆通貨チャットの減価の背景には、ミャンマーの脆弱な経済体質がある。海外との経済交流再開で企業活動が活発化したが、国内の財供給力不足で貿易赤字は拡大、また、生産性に見合わない賃金引上げなどでインフレ率が高まっている。
◆急速な経済体質の変化を期待できない中、通貨チャットの減価を止めるには、貿易赤字の拡大を食い止め、インフレ率を抑制するような、いわゆる引き締め的な金融財政政策が実施される必要があるが、これは、景気減速を伴う可能性が高いため、現政権としては採用しにくい。
◆結局、政府としては様子見という形となり、当面、通貨チャットは減価方向が続く可能性が高い。ただ、対外収支やインフレが適正な水準を大幅に超えると、急激な景気減速や金融危機が生じるリスクもあるため、そのような状況に陥る可能性が高まれば、引き締め策を実施すべきだろう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
李在明氏の「K-イニシアティブ」を解明する
大統領選で一歩リードしている李在明氏は、韓国経済と日韓関係をどう変えるのか
2025年06月02日
-
カシミール問題を巡る印パの内情と経済への影響
インドは米国の介入を快く思わないが、経済にとっては都合が良い
2025年05月23日
-
尹大統領の罷免決定、不動産問題が選挙のカギに
賃借人保護の不動産政策を支持する「共に民主党」の李在明氏が、大統領選挙で一歩リードか
2025年04月24日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
第225回日本経済予測(改訂版)
人口減少下の日本、持続的成長への道筋①成長力強化、②社会保障制度改革、③財政健全化、を検証
2025年06月09日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
「トランプ2.0」、外国企業への「報復課税」?
Section 899(案)、米国に投資する日本企業にもダメージの可能性有
2025年06月13日
-
日本経済見通し:2025年5月
経済見通しを改訂/景気回復を見込むもトランプ関税などに警戒
2025年05月23日
-
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
第225回日本経済予測(改訂版)
人口減少下の日本、持続的成長への道筋①成長力強化、②社会保障制度改革、③財政健全化、を検証
2025年06月09日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
「トランプ2.0」、外国企業への「報復課税」?
Section 899(案)、米国に投資する日本企業にもダメージの可能性有
2025年06月13日
日本経済見通し:2025年5月
経済見通しを改訂/景気回復を見込むもトランプ関税などに警戒
2025年05月23日
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日