サマリー
◆グローバル化進展とともに、新興国では、より高い賃金、より多くの就労機会を求めて自国以外で働く人が増加している。世界銀行の資料によれば、2013年現在、世界全体で約2億4,700万人の移民労働者がいるとされている。この年の世界人口が71億8,000万人なので、移民労働者は、全人口の約3.4%を占めることになる。移民労働者を多く出している代表的な国は、インド、メキシコ、ロシア、中国、バングラデシュ、パキスタン、フィリピン等である。
◆東南アジアに限定すると、移民労働者は約2,100万人で、世界全体の約10分の1である。多い順番で、フィリピン(約600万人)、インドネシア(約411万人)、ミャンマー(約314万人)、ベトナム(約259万人)、マレーシア(約168万人)、ラオス(約129万人)等となっている。移民労働者が多くなる背景には、国内経済の不安定さがあり、フィリピンやミャンマーはその典型といえる。
◆ミャンマーからの移民労働者約314万人を国別で見ると、タイが約189万人で全体の約6割を占めている。働いている人の出身地は、タイの国境付近であるケースがほとんどで、いわゆる少数民族に属する人々である。タイに次いで多いのは、サウジアラビアであるが、その数は約60万人とかなり少なくなる。ただ、2国を合わせると全体の移民労働者の8割を占め、ミャンマー人は、タイかサウジアラビアに働きに行っているといっても過言ではない。
◆2015年のミャンマーへの海外からの送金額は約34億ドル (対GDP比5.0%)となっている。国別では、タイからが約18億ドルと全体の半分を占める。次に多いのがサウジアラビアからで約9億ドルである。その次になると、極端に送金額が少なく、米国から約1.8億ドル、バングラデシュから約1.4億ドルとなっている。
◆ミャンマー経済は高成長を続けているものの、他国と比較して賃金水準はまだ低く、雇用機会も少ないため、今後も海外で働くミャンマー人の数は減らないであろう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
インド:所得減税・GST改正の効果は?
GST税率引き下げは耐久財消費を喚起。企業投資につながるか注視
2025年11月14日
-
インドネシア:弱含む内需への対応策は?
雇用問題が消費者心理に影響。ヒト・モノへの投資バランス調整を
2025年11月13日
-
なぜベトナムは「不平等協定」を結ぶのか
米国・ベトナムの「ディール」を解明する
2025年08月14日
最新のレポート・コラム
-
大和のクリプトナビ No.5 2025年10月以降のビットコイン急落の背景
ピークから最大35%下落。相場を支えた主体の買い鈍化等が背景か
2025年12月10日
-
開示府令の改正案が公表(2026年から一部適用)
有価証券報告書のサステナビリティ情報、人的資本、総会前開示に関する改正案
2025年12月10日
-
2025年12月日銀短観予想
輸出不振や原材料高で製造業の業況判断DI(最近)は悪化を見込む
2025年12月10日
-
議決権行使助言業者への依拠は共同保有認定
米国SECのウエダ委員が議決権行使助言業者規制の方向性を明らかに
2025年12月09日
-
日中関係悪化、中国は自国経済・社会の不安定化回避を優先か
2025年12月10日
よく読まれているリサーチレポート
-
日本経済見通し:2025年10月
高市・自維連立政権の下で経済成長は加速するか
2025年10月22日
-
非財務情報と企業価値の連関をいかに示すか
定量分析の事例調査で明らかになった課題と今後の期待
2025年11月20日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
第227回日本経済予測
高市新政権が掲げる「強い経済」、実現の鍵は?①実質賃金引き上げ、②給付付き税額控除の在り方、を検証
2025年11月21日
-
グラス・ルイスの議決権行使助言が大変化
標準的な助言基準を廃し、顧客ごとのカスタマイズを徹底
2025年10月31日
日本経済見通し:2025年10月
高市・自維連立政権の下で経済成長は加速するか
2025年10月22日
非財務情報と企業価値の連関をいかに示すか
定量分析の事例調査で明らかになった課題と今後の期待
2025年11月20日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
第227回日本経済予測
高市新政権が掲げる「強い経済」、実現の鍵は?①実質賃金引き上げ、②給付付き税額控除の在り方、を検証
2025年11月21日
グラス・ルイスの議決権行使助言が大変化
標準的な助言基準を廃し、顧客ごとのカスタマイズを徹底
2025年10月31日

