サマリー
◆タイは少子高齢化が進んでいるため、潜在成長率も下がっている。今後、長期的な停滞を回避するためにはどのような戦略が考えられるだろうか。
◆カンボジアやラオスやミャンマーといった周辺国(いわゆるCLM)に労働集約的な産業を移転することで、メコン圏をタイを中心とする分業体制に組み込む「タイプラスワン」の動きは加速している。タイプラスワンが成立するには、低賃金で豊富な労働力という条件が必要不可欠である。しかし、CLMの人口規模や現在の高い経済成長を勘案すると、中長期的には行き詰まる可能性が高い。
◆タイプラスワンが成熟した後を見据えた産業構造の新陳代謝を考える必要がある。そのためには、これまで以上に産業の高度化が求められる。具体的な方策としては、高等教育の充実や研究開発の促進、またビジネス環境の整備が挙げられる。どちらも現状では、まだまだ改善の余地があり、政府のより一層の政策の推進が期待される。
◆将来的に、産業の高度化は他のASEAN諸国にも求められるだろう。他のASEAN諸国でもタイに遅れて少子高齢化が進むと予想され、タイと同様、低成長に陥る可能性がある。そのため、産業の高度化を図るために、高等教育の充実とビジネス環境の整備を行っていく必要がある。一方、ASEAN域内全体での効率的な分業体制を整備することがASEAN諸国の経済発展にとって重要である。そのためにも、ASEAN内でのサービスリンクコストの削減をASEAN諸国が手を取り合って行う必要があり、ASEAN共同体の統合深化がこれまで以上に求められるであろう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
インド:所得減税・GST改正の効果は?
GST税率引き下げは耐久財消費を喚起。企業投資につながるか注視
2025年11月14日
-
インドネシア:弱含む内需への対応策は?
雇用問題が消費者心理に影響。ヒト・モノへの投資バランス調整を
2025年11月13日
-
なぜベトナムは「不平等協定」を結ぶのか
米国・ベトナムの「ディール」を解明する
2025年08月14日
最新のレポート・コラム
-
大和のクリプトナビ No.5 2025年10月以降のビットコイン急落の背景
ピークから最大35%下落。相場を支えた主体の買い鈍化等が背景か
2025年12月10日
-
開示府令の改正案が公表(2026年から一部適用)
有価証券報告書のサステナビリティ情報、人的資本、総会前開示に関する改正案
2025年12月10日
-
2025年12月日銀短観予想
輸出不振や原材料高で製造業の業況判断DI(最近)は悪化を見込む
2025年12月10日
-
議決権行使助言業者への依拠は共同保有認定
米国SECのウエダ委員が議決権行使助言業者規制の方向性を明らかに
2025年12月09日
-
日中関係悪化、中国は自国経済・社会の不安定化回避を優先か
2025年12月10日
よく読まれているリサーチレポート
-
日本経済見通し:2025年10月
高市・自維連立政権の下で経済成長は加速するか
2025年10月22日
-
非財務情報と企業価値の連関をいかに示すか
定量分析の事例調査で明らかになった課題と今後の期待
2025年11月20日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
第227回日本経済予測
高市新政権が掲げる「強い経済」、実現の鍵は?①実質賃金引き上げ、②給付付き税額控除の在り方、を検証
2025年11月21日
-
グラス・ルイスの議決権行使助言が大変化
標準的な助言基準を廃し、顧客ごとのカスタマイズを徹底
2025年10月31日
日本経済見通し:2025年10月
高市・自維連立政権の下で経済成長は加速するか
2025年10月22日
非財務情報と企業価値の連関をいかに示すか
定量分析の事例調査で明らかになった課題と今後の期待
2025年11月20日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
第227回日本経済予測
高市新政権が掲げる「強い経済」、実現の鍵は?①実質賃金引き上げ、②給付付き税額控除の在り方、を検証
2025年11月21日
グラス・ルイスの議決権行使助言が大変化
標準的な助言基準を廃し、顧客ごとのカスタマイズを徹底
2025年10月31日

