タイの産業構造転換の必要性

さらなる産業の高度化が求められる

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2016年11月15日

  • 永井 寛之

サマリー

◆タイは少子高齢化が進んでいるため、潜在成長率も下がっている。今後、長期的な停滞を回避するためにはどのような戦略が考えられるだろうか。


◆カンボジアやラオスやミャンマーといった周辺国(いわゆるCLM)に労働集約的な産業を移転することで、メコン圏をタイを中心とする分業体制に組み込む「タイプラスワン」の動きは加速している。タイプラスワンが成立するには、低賃金で豊富な労働力という条件が必要不可欠である。しかし、CLMの人口規模や現在の高い経済成長を勘案すると、中長期的には行き詰まる可能性が高い。


◆タイプラスワンが成熟した後を見据えた産業構造の新陳代謝を考える必要がある。そのためには、これまで以上に産業の高度化が求められる。具体的な方策としては、高等教育の充実や研究開発の促進、またビジネス環境の整備が挙げられる。どちらも現状では、まだまだ改善の余地があり、政府のより一層の政策の推進が期待される。


◆将来的に、産業の高度化は他のASEAN諸国にも求められるだろう。他のASEAN諸国でもタイに遅れて少子高齢化が進むと予想され、タイと同様、低成長に陥る可能性がある。そのため、産業の高度化を図るために、高等教育の充実とビジネス環境の整備を行っていく必要がある。一方、ASEAN域内全体での効率的な分業体制を整備することがASEAN諸国の経済発展にとって重要である。そのためにも、ASEAN内でのサービスリンクコストの削減をASEAN諸国が手を取り合って行う必要があり、ASEAN共同体の統合深化がこれまで以上に求められるであろう。

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