サマリー
◆ラオスは、インドシナ半島の中間に位置し、周辺を中国、ミャンマー、タイ、カンボジア、ベトナムに囲まれ海に面していない国である。亜熱帯地方に属し雨量も多く農業に適した気候風土で水力発電も盛んである。また、銅を中心に鉱物資源にも恵まれている。一方で、港へのアクセスが悪く、物流コストが高いため、本来的には、製造業進出には適さない立地である。
◆しかし、このところ製造業進出が増加し始めている。第一の理由は、タイの人件費上昇で採算が取れなくなった企業が、労働集約的な部分をラオスに移していることがある。ラオスは人件費が安い他に、タイ語が通じるのでタイに進出している企業としては労働者の訓練が容易となる。
◆第二には、東西回廊の完成で、物流コストが下がってきていることである。メコン川にかかる橋の近くに工業団地ができて製造業が進出してきている。しかし、本格的に工場全体をタイから移転するには、依然として立地が悪すぎるため、あくまでも、労働集約的な生産工程の一部分をラオスで生産するというレベルに留まっている。
◆物流環境変化の可能性の観点では、中国がラオス内に中国ラオス鉄道の着工を開始していることも注目される。完成すれば、タイやベトナムへのルートが広がることになり、ラオスとしてはビジネスチャンスが拡大する。
◆ラオスの経済開発は、立地の特性から考えて、他のアセアン国とは戦略を異にする可能性が高い。すなわち、工業団地への製造業誘致による工業化というよりは、農業の高付加価値化、鉱物資源開発、水力発電、観光産業振興などが主な成長ファクターとなっていくであろう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
日本経済見通し:2024年2月
2025年度にかけて1%前後のプラス成長と2%インフレを見込む
2024年02月22日
-
ビットコイン現物ETF、日本で組成可能か?
米SEC承認を受けて、日本で導入することの法制度上の是非を考察
2024年02月13日
-
第220回日本経済予測(改訂版)
賃上げの持続力と金融政策正常化の行方①自然利子率の引き上げ、②投資と実質賃金の好循環、を検証
2024年03月11日
-
日本経済見通し:2024年3月
24年の春闘賃上げ率5%超えを受け、日銀はマイナス金利政策を解除
2024年03月22日
-
2024年の日本経済見通し
緩やかな景気回復と金融政策の転換を見込むも海外経済リスクに注意
2023年12月21日
日本経済見通し:2024年2月
2025年度にかけて1%前後のプラス成長と2%インフレを見込む
2024年02月22日
ビットコイン現物ETF、日本で組成可能か?
米SEC承認を受けて、日本で導入することの法制度上の是非を考察
2024年02月13日
第220回日本経済予測(改訂版)
賃上げの持続力と金融政策正常化の行方①自然利子率の引き上げ、②投資と実質賃金の好循環、を検証
2024年03月11日
日本経済見通し:2024年3月
24年の春闘賃上げ率5%超えを受け、日銀はマイナス金利政策を解除
2024年03月22日
2024年の日本経済見通し
緩やかな景気回復と金融政策の転換を見込むも海外経済リスクに注意
2023年12月21日