民主化が必要なのは中国か、ミャンマーか?

経済発展段階と政治的洗練の関係

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2015年11月18日

  • 児玉 卓

サマリー

◆経済の発展段階の程度によって、所得水準と政治の洗練度との関係は異なる。一定程度の経済発展を実現した後に、両者の相関が強まるのである。「所得水準の上昇が中国の民主化を促す」という期待は裏切られ続けているが、これは、中国の発展度合いが、依然として、開発独裁的な政治手法で達成可能なレベルにとどまっているからである。同国の一人当たりGDPが10,000ドル、15,000ドルを目指していく中で、政治体制変革を伴わずに成長持続が可能なのかという問いの深刻さが増すことになろう。


◆この議論は、いわゆる「中所得国の罠」にも示唆を与える。例えば、政治的混迷が深刻化するマレーシアがその「罠」を回避し、先進国入りを実現するには、政治改革、ブミプトラ政策のような、洗練からはほど遠い政策の放棄が重要なカギを握っているとも考えられる。


◆一方、アジアの最貧国に位置するミャンマーのような国にとっての含意は、民主化の進展が経済発展を促すとは限らないということである。こと、持続的な成長を確保するという観点からすれば、ミャンマーの新政権に望まれるのは、一段の民主化であるよりは政府の効率性や、規制の質の改善に邁進することであろう。

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