サマリー
◆経済の発展段階の程度によって、所得水準と政治の洗練度との関係は異なる。一定程度の経済発展を実現した後に、両者の相関が強まるのである。「所得水準の上昇が中国の民主化を促す」という期待は裏切られ続けているが、これは、中国の発展度合いが、依然として、開発独裁的な政治手法で達成可能なレベルにとどまっているからである。同国の一人当たりGDPが10,000ドル、15,000ドルを目指していく中で、政治体制変革を伴わずに成長持続が可能なのかという問いの深刻さが増すことになろう。
◆この議論は、いわゆる「中所得国の罠」にも示唆を与える。例えば、政治的混迷が深刻化するマレーシアがその「罠」を回避し、先進国入りを実現するには、政治改革、ブミプトラ政策のような、洗練からはほど遠い政策の放棄が重要なカギを握っているとも考えられる。
◆一方、アジアの最貧国に位置するミャンマーのような国にとっての含意は、民主化の進展が経済発展を促すとは限らないということである。こと、持続的な成長を確保するという観点からすれば、ミャンマーの新政権に望まれるのは、一段の民主化であるよりは政府の効率性や、規制の質の改善に邁進することであろう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
李在明氏の「K-イニシアティブ」を解明する
大統領選で一歩リードしている李在明氏は、韓国経済と日韓関係をどう変えるのか
2025年06月02日
-
カシミール問題を巡る印パの内情と経済への影響
インドは米国の介入を快く思わないが、経済にとっては都合が良い
2025年05月23日
-
尹大統領の罷免決定、不動産問題が選挙のカギに
賃借人保護の不動産政策を支持する「共に民主党」の李在明氏が、大統領選挙で一歩リードか
2025年04月24日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
第225回日本経済予測(改訂版)
人口減少下の日本、持続的成長への道筋①成長力強化、②社会保障制度改革、③財政健全化、を検証
2025年06月09日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
「トランプ2.0」、外国企業への「報復課税」?
Section 899(案)、米国に投資する日本企業にもダメージの可能性有
2025年06月13日
-
日本経済見通し:2025年5月
経済見通しを改訂/景気回復を見込むもトランプ関税などに警戒
2025年05月23日
-
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
第225回日本経済予測(改訂版)
人口減少下の日本、持続的成長への道筋①成長力強化、②社会保障制度改革、③財政健全化、を検証
2025年06月09日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
「トランプ2.0」、外国企業への「報復課税」?
Section 899(案)、米国に投資する日本企業にもダメージの可能性有
2025年06月13日
日本経済見通し:2025年5月
経済見通しを改訂/景気回復を見込むもトランプ関税などに警戒
2025年05月23日
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日