好対照のフィリピンとマレーシア

現地視察報告

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2014年10月01日

  • 児玉 卓

サマリー

◆Asia’s New Economic Tiger、或いはNew Rising Star。最近の成長パフォーマンスの改善を受け、フィリピンの官民のリーダー達はそう自賛するが、同国の高成長の持続性を疑わせる材料は少なくない。例えば出稼ぎ送金への依存度の高さは、政府の産業政策の不在と相俟って、同国の工業化、投資主導型成長の障害になっている。中国などにおいて工業化と高成長の担い手となった若くて豊富な労働力が、フィリピンにあっては宝の持ち腐れとなってしまっているのだ。


◆一方、「中所得国の罠」回避が課題とされるマレーシアは、相応の成長余地を残しているように見える。より所得水準が高く、産業構造の成熟化が進んでいるシンガポールとの一体化戦略には合理性がある。フィリピンと比較した同国の特徴は、何よりも経済成長に向けた政府のコミットメントの強さである。そして、マレーシアでは政治の安定が、成長への持続的なコミットメントを可能にした。フィリピンが必要としているのも、安定的な政権によるリーダーシップである。

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