サマリー
◆ASEAN各国では経済発展に伴い、初等教育への就学率は上昇している。義務教育の制度は異なるものの、近年では初等教育の就学率はほぼ90%を超えている他、若年層の識字率も90%を超えており、初等教育へのアクセスは上昇している。ただし、一部の国では、教育インフラの不足や、貧困からドロップアウトする児童が見られる、などの問題があり、十分な質の教育が実施されているとは言えない。
◆中等教育以上においては、一人当たりGDPと就学率には相関が見られる。一人当たりGDPが低い国では中等教育へのアクセスの機会が少なく、第一に就学率を向上させることが必要である。また、質的向上にも課題が多い。OECDによる生徒の学習到達度調査の国際比較では、ベトナムの平均得点は高かったものの、マレーシア、タイ、インドネシアはOECD平均を下回っている。ベトナムは一人当たりGDPのレベルと比較し、平均得点が高い位置にあることから、生徒の学力の高さ(=労働力の高度化)を通じ、今後の成長が見込める可能性が高いと言えるだろう。一方、タイ、マレーシア、インドネシアについては、教育の質を向上させ、人材の高度化を図ることが、所得水準の上昇に向けて必要となろう。
◆高等教育(大学・専門学校等)就学率は中等教育以上に所得による格差が大きくなる。加工・組立産業にとどまらない経済成長を続けるためには、先端研究やイノベーションといった分野を発展させることや、高度人材の育成がより求められている。
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