インドが得た成長再開の好機

「モディノミクス」への期待とその弱点

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2014年06月02日

  • 児玉 卓

サマリー

◆総選挙での圧勝を経て誕生したモディBJP政権の経済政策の課題を一言でいえば、投資主導型成長パターンを再現させることである。人口構成の成熟化が成長率減速の背景をなす中国などと比べ、成長率底上げの実現可能性は高いはずである。


◆その際、株価の上昇が象徴する「インドは変わるかもしれない」という期待の高まりは重要である。これが同国の期待成長率を上方修正させ、内外企業の投資の増大につがなる可能性があるからだ。


◆ただし、この期待が維持されるか、裏切られるか、或いは一層高まるかは今のところ何とも言えない。一つ、確かなことは、モディ氏がグジャラート州の経験を連邦レベルの政策に移植することは至難だということである。モディ氏が州首相時代にトップダウン的政策を遂行できたのは、インドが各州に強い自主裁量権を与える地方自治を尊重する国だからである。連邦政府の長となった今、モディ氏は自治を約束された各州・直轄領を束ねる困難に直面せざるを得ない。


◆もちろん、インドが過去10年経験しなかった変革のチャンスを得ていることは間違いない。これを活かし、成長率底上げを実現することは、同じく経済停滞に直面する他の多くの新興国にとっても、重要な成功体験となろう。

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