ASEAN NOW (Vol.14)

ミャンマーの概況と今後の展望

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2012年07月11日

  • 佐藤 清一郎

サマリー

◆ミャンマーは、2011年3月のテインセイン政権成立とその後の民主化路線により、一躍世界に注目されることとなった。ミャンマーはアセアン加盟国の一つで、ラオス、カンボジアとともに発展が遅れた国と分類されるが、国土面積、人口規模、立地状況等から見て、ラオス、カンボジアとは一線を画す。ミャンマーは、豊富な労働力を背景に製造業振興が可能であり、また、バングラデシュやインドに隣接した立地から南アジアへの重要拠点となる可能性を秘めている。テインセイン政権は、今後、中期的に7.7%成長を目指している。

◆タイ、インドネシア、マレーシア等のアセアン主要国の工業化は1980年代後半に活発となったが、ミャンマーの工業化はかなり遅れている。ミャンマーの製造業割合が高まり始めたのは2000年代に入ってからである。ミャンマーの貿易構造は比較的シンプルで、貿易相手国は、タイ、中国、インド、シンガポールに集中、主な輸出品は、天然ガス、縫製品等、主な輸入品は、ディーゼル油、一般機械等である。ミャンマーへの海外直接投資は、国と分野において集中が見られる。投資国としては、中国とタイ、投資分野としては、水力発電や石油・天然ガス開発である。

◆2012年4月のテインセイン大統領来日の際、日本とミャンマー両国は、(1)国民の生活向上のための支援、(2)経済・社会を支える人材の能力向上や制度の整備のための支援、(3)持続的経済成長のために必要なインフラや制度の整備に関する支援を大きな柱とするミャンマー支援策について合意した。

◆今後のミャンマーの経済発展においては、日本の戦後の成長経験等も参考に、海外との協力の下、後発国の利益を十分に活かしながら、進んでいくことが効率的であろう。その際、海外からの資金が、大量に、かつ急激に流入して、国内経済に悪影響を与えないように、海外資金流入に対するモニタリング、対外債務のバランスチェック等に十分注意を払う必要がある。

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