ASEAN NOW (Vol.9)

アセアンと中国の貿易構造

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2012年02月09日

  • 佐藤 清一郎

サマリー

◆アセアンと中国の経済関係は深まりを見せている。中国側の思惑は、アセアンの資源狙い、豊かさ増すアセアンへの商品販売狙い、安価な賃金を求めての企業進出等である。アセアン側の思惑は、中国からの技術移転や中国の高成長のメリットを自国に取り込むこと。

◆アセアン各国側から中国への輸出割合を見ると、マレーシアが一番高く13%、その次が、インドネシア、タイ、フィリピンで11%、ベトナムは一番低くて9%である。一方で中国からの輸入割合を見ると、ベトナムが24%、インドネシアが18%、その次が、タイとマレーシアで13%、フィリピンが一番低く8%である。これらの数値からすると、中国との関係はフィリピンが一番少なそうである。

◆逆に、中国側からアセアン主要5ヶ国(インドネシア、マレーシア、フィリピン、タイ、ベトナム)全体への輸出割合を見ると7.1%、一方輸入割合は9.1%となっている。中国側から見たアセアン主要5ヶ国全体との貿易収支は赤字である。大幅貿易赤字となっているのは、対マレーシアやタイ、一方で、大幅貿易黒字となっているのは対ベトナムである。

◆アセアン主要各国で、中国との貿易関係に違いが出るのは、経済発展段階の違いや資源の有無等が関係している。中国との取引において、タイ、マレーシア、フィリピンとは、機械や電子機器が多く取引されている一方で、インドネシアやベトナムとは、資源関係の取引が多くなっている。

◆どのような形態であれ、アセアンと中国との貿易関係は深化している。貿易取引が、双方にメリットをもたらしている。この動きは、今後も更に深まる方向になると予想され、アセアンと中国は、双方ともに更に気になる存在となっていくであろう。

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