ASEAN NOW (Vol.8)

中所得国からの脱出目指すマレーシアの挑戦

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2012年01月12日

  • 佐藤 清一郎

サマリー

◆アセアンの中でマレーシアは、シンガポールとブルネイを除けば経済発展が一番進んでいる国と認識されている。そのため新興国というには違和感があるレベルだが、一方で先進国と比較した場合には、依然として相当の開きがあるのも事実である。今のマレーシアの最重要課題は如何に現状を打破して次の経済発展段階に進めるかである。

◆課題克服に向けたマレーシアの最大の問題は設備投資の割合が低いことである。設備投資は技術革新を具現化する重要なツールであり、また、ダイナミックな成長を達成するためにも大事なものである。マレーシアは、アジア通貨危機以前は比較的高い投資割合を維持していたが、アジア通貨危機以降は急激に割合が低下した。その後も回復の動きが見られない。

◆2009年に誕生したナジブ内閣は、それまでの政策を転換して経済開放を積極化させている。足元でも規制緩和などを実施している他、中長期的計画の中では12の重要分野を設定して中所得国からの脱出を図ろうとしている。マハティール政権時代にとられた現地民優先政策(ブミプトラ政策)が、経済の閉鎖性を生み成長を遅らせた面も大きいため、現在の開放政策は更なる発展にはプラス材料である。

◆ナジブ政権が実施している政策を見ると、マレーシアの見方を以前とは変えないといけないかもしれない。インドネシアに見られるように、開放政策は、生産性向上や競争力強化を通じて良い結果をもたらしており、マレーシアにもそれが期待できるのである。今後のポイントは、(1)アジア通貨危機後に急激に低下してしまった投資割合を、どの程度回復できるか、(2)生産性向上の大きな担い手となる技術力ある中小企業をどの程度育成できるか、(3)技術革新の基本となるR&D 投資やICT 技術導入をきちんとできるか等である。

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