新指導部によって「都市化」が今後の中国経済の新たな成長要因であり、内需拡大の最大の潜在力であると発表されたことから、「都市化」についての討論や情報が大量に溢れるようになった。しかしながらその多くは都市化による固定資産投資の増加や、農民の都市流入による住宅需要の増加、中産階級6億人の消費が生み出されるという事に重点が置かれている。ある試算によると、今後10年間で新たに増加する都市人口は4億人前後に達し、農民工の市民化に一人当たり10万元必要だとすると、固定資産投資の需要を40兆元増加させることが可能であるとしている。これより、不動産産業は依然として基幹産業であるだけではなく、都市の不動産価格は引き続き上昇すると考えられている。だが、このような都市化に対する理解は社会経済の発展規律に乖離するだけでなく、中央政府が強調する都市化の意味からも大きく外れている。今後新しい段階に進む「都市化」がこのような構想であるとすれば、この十年来推し進められてきた都市化と何ら変わりがないことになる。
この十年間、GDP増加のために政府は都市に大量の資源を投入してきたことから、世界に類を見ない都市建設活動が湧き起こった。中国の新築住宅の総額は世界全体の半分以上を占めた結果、都市規模は拡大し、不動産価格は上昇、GDPも増加したものの、農民は都市に移住する方法がない。中国の都市化率は2011年に51.3%に達したが、戸籍人口に基づく計算では35%にしかならない。農民が都市に入らずに何を都市化と呼ぶのであろうか?つまり、都市化の核心は農民を都市へ移住させることなのである。
※掲載レポートは中国語原本レポートにおけるサマリー部分の和訳です。
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