サマリー
◆中国全人代において憲法が改正され、国家主席の任期が撤廃されたことは、一般に習近平氏の長期政権への布石とみなされている。欧米には、経済発展が民主化への動きを後押しするという経験則を身をもって否定し続ける中国を戸惑いの目で見る向きも多い。しかし、所得水準と民主化を含む政治スタイルとにある程度の正の相関が観察されるのは、比較的所得水準の高い国家群においてであり、中国はその枠外にある。
◆従って、問題はこれからである。中国の所得水準の向上につれて、非民主的な政治スタイルを継続することのコストは高まることになろう。経済的な、いわゆるチャイナリスクについても、その深刻さの度合いを決めるのは投資率の高さや債務の大きさそのものではなく、政府主導で実験主義的にソフトランディングを志向する手法の社会的受容性にあると思われる。まだ、暫くの猶予はあろうが、今後の所得水準の上昇が現行の政治・政策スタイルと決定的な齟齬を来したとき、「チャイナリスク」の深刻化を懸念しなければならなくなる。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
日本経済見通し:2024年2月
2025年度にかけて1%前後のプラス成長と2%インフレを見込む
2024年02月22日
-
ビットコイン現物ETF、日本で組成可能か?
米SEC承認を受けて、日本で導入することの法制度上の是非を考察
2024年02月13日
-
第220回日本経済予測(改訂版)
賃上げの持続力と金融政策正常化の行方①自然利子率の引き上げ、②投資と実質賃金の好循環、を検証
2024年03月11日
-
日本経済見通し:2024年3月
24年の春闘賃上げ率5%超えを受け、日銀はマイナス金利政策を解除
2024年03月22日
-
2024年の日本経済見通し
緩やかな景気回復と金融政策の転換を見込むも海外経済リスクに注意
2023年12月21日
日本経済見通し:2024年2月
2025年度にかけて1%前後のプラス成長と2%インフレを見込む
2024年02月22日
ビットコイン現物ETF、日本で組成可能か?
米SEC承認を受けて、日本で導入することの法制度上の是非を考察
2024年02月13日
第220回日本経済予測(改訂版)
賃上げの持続力と金融政策正常化の行方①自然利子率の引き上げ、②投資と実質賃金の好循環、を検証
2024年03月11日
日本経済見通し:2024年3月
24年の春闘賃上げ率5%超えを受け、日銀はマイナス金利政策を解除
2024年03月22日
2024年の日本経済見通し
緩やかな景気回復と金融政策の転換を見込むも海外経済リスクに注意
2023年12月21日