サマリー
◆中国では、「国進民退」が指摘される中、2012年来、民間資本に公平かつ透明性のある市場環境を提供すること、特に、鉄道、エネルギー、金融等を民間資本参入の重点分野とすることが改めて指示されるなどの動きが見られている。その背後には、マクロ的循環要因による経済成長率の鈍化に加え、中長期的に中国経済が成長パターンの転換点にさしかかっているとの問題意識がある。
◆統計上はむしろ「国退民進」にもかかわらず、特に近年「国進民退」が叫ばれる背景には、経済規模全体が拡大するパレート改善プロセスを主として民間セクターが担い、国有企業の比重は相対的に低下してきた一方、実態上、国有セクターは引き続き経済の基幹的な部分を支配し、私企業の参入から保護され特権的な地位を享受していること、「選択と集中」のプロセスを経て残った国有企業はより大規模かつ強力になったこと、さらにはグローバル金融危機の影響、それへの対応等の面で現れた国有企業の優位性といった要因が指摘できる。
◆今後の民間セクター発展に関連し、国有セクターと民間セクターの効率性評価の問題、国有セクターの非効率性に伴う国民経済上のコスト負担と所得格差問題、また、民間セクター拡大政策が必ずしも確実に実行されてこなかった行政上の問題に留意する必要がある。
(注)本稿は、外国為替貿易研究会発行「国際金融」2013年2月号に掲載された同タイトルのレポートを、その後のデータを加え修正したものである。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
中国:関税引き下げを受け、見通しを上方修正
25年は3.9%→4.8%、26年は4.0%→4.2%に上方修正
2025年05月23日
-
中国:関税115%引き下げ、後は厳しい交渉へ
追加関税による実質GDP押し下げ幅は2.91%→1.10%に縮小
2025年05月13日
-
中国:トランプ関税2.0で25年は3.9%成長へ
迂回輸出は当面温存。「トランプ関税2.0」の長期化は想定せず
2025年04月23日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
「相互関税」による日本の実質GDPへの影響は最大で▲1.8%
日本に対する相互関税率は24%と想定外に高い水準
2025年04月03日
-
「相互関税」を受け、日米欧中の経済見通しを下方修正
2025年の実質GDP成長率見通しを0.4~0.6%pt引き下げ
2025年04月04日
-
米国による25%の自動車関税引き上げが日本経済に与える影響
日本の実質GDPを0.36%押し下げる可能性
2025年03月27日
-
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日
-
日本経済見通し:2025年3月
トランプ関税で不確実性高まる中、25年の春闘賃上げ率は前年超えへ
2025年03月24日
「相互関税」による日本の実質GDPへの影響は最大で▲1.8%
日本に対する相互関税率は24%と想定外に高い水準
2025年04月03日
「相互関税」を受け、日米欧中の経済見通しを下方修正
2025年の実質GDP成長率見通しを0.4~0.6%pt引き下げ
2025年04月04日
米国による25%の自動車関税引き上げが日本経済に与える影響
日本の実質GDPを0.36%押し下げる可能性
2025年03月27日
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日
日本経済見通し:2025年3月
トランプ関税で不確実性高まる中、25年の春闘賃上げ率は前年超えへ
2025年03月24日