サマリー
財政部が3月に発表した全国の2011年度予算案は、2008年11月以来の「積極的な財政政策」という基本方針を継続する一方で、GDPに占める財政赤字の割合を4兆元景気対策で膨らんだ2009年の2.8%から2010年は2.5%、今年は2.0%前後にまで縮小するとした。支出面では、特に物価の安定や消費拡大、第12次5ヵ年計画で謳われている「民生の改善」に焦点をあてた内容となった。
国家の財政支出は2010年実績比11.9%増の10兆元、財政収入は同8.0%増の9兆元を見込んでいる。支出項目をみると、教育(前年実績比14.6%増)、社会保障・就業対策(14.2%増)、医療衛生(13.0%増)等に関わる予算が軒並み増額された。
中央政府の住宅供給向け拠出は1293億元と、前年予算の約2.5倍、前年実績比の14.8%増となる見通しであり、低価格住宅の建設や老朽化した家屋の改築等、住環境の改善を加速する方針である。また、農林業・水利関係(18.3%増)や食糧・食用油等物資の備蓄管理(23.9%増)の大幅な増額を見込み、食料生産の安定化を通じて特に物価の影響を受けやすい低中所得層の所得向上に努める意向である。
既に不動産価格や食品価格の抑制策が打ち出されてきたが、中国人民銀行が四半期ごとに発表する物価意識調査によると、3月に「物価が高すぎて受入れられない」と回答した都市住民の割合は67%と、ピークとなった昨年12月に比べて7pt低下したものの、依然高い水準であることに変わりはない。輸入物価も3ヶ月連続で上昇ペースが加速しており、政府にとって全体的な物価上昇圧力は今年も大きな懸念材料となろう。2011年は消費者物価上昇率の抑制目標を4%とし、最重要課題に位置づけている。
国民の間では、大卒者の就職難、汚職の蔓延等への不満も根強い。3月の全国人民代表大会開催を前に北京の他、国内各地で緊張をもたらしたデモや、今も続く中東諸国の民主化運動は、国家の大きな脅威となり、今や小手先の対応ではごまかしが効かなくなっている。民生改善が前面に打ち出されたのは、中国共産党・政府の危機感の表れといえよう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
米中貿易戦争、勝者は中国
伝家の宝刀・レアアース、輸出先の分散化、迂回輸出
2026年10月02日
-
中国政府が景気テコ入れ策を発表
再貸出限度額の増額、住宅ローンへの1%利子補給
2026年10月01日
-
中国経済見通し:不動産不況、脱却はまだ先
住宅完成後販売への移行は◎。一段と悪化する内需と堅調な外需
2026年09月24日
最新のレポート・コラム
-
一括取得型自己株式取得(ASR)入門
ASRに関する基本的な事項をQ&A形式で解説
2026年10月16日
-
「次期学習指導要領等に向けた審議まとめ」における金融経済教育に関する記述
金融経済教育関連に限ると、大幅な拡充は行われない方向性か
2026年10月16日
-
日本の長期金利、2035年に5%台の可能性
2035年に3.5~4.2%程度で、海外保有拡大で1%pt超の上乗せも
2026年10月16日
-
なぜ企業は同じ情報を何度も提出しなければならないのか
公的統計のデジタル化を問う①-負担軽減の「効果」
2026年10月16日
-
成長投資の先にあるもの ~AI時代に問われる「組織能力」~
2026年10月16日
よく読まれているリサーチレポート
-
国税庁が非上場株式評価の方向性を公表
簿価純資産と収益力で評価する「残余利益方式」に統一の方向
2026年09月08日
-
GPIF経営委員会の8月開催が意味すること
基本ポートフォリオ見直しに向けて第一歩を踏み出したのか
2026年09月01日
-
日米協調介入は円安の是正にどこまで効果を発揮したのか?
更なる介入の合理性は低下。レジーム転換の有無が今後の焦点に
2026年09月14日
-
コーポレートガバナンス・コード改訂の焦点
企業の自律的な判断と実質を伴う説明が問われる
2026年08月27日
-
第230回日本経済予測(改訂版)
円安・金利上昇下の日本経済と成長力強化への課題①AI活用による経済への影響、②資産市場と経済の好循環、を検証
2026年09月08日
国税庁が非上場株式評価の方向性を公表
簿価純資産と収益力で評価する「残余利益方式」に統一の方向
2026年09月08日
GPIF経営委員会の8月開催が意味すること
基本ポートフォリオ見直しに向けて第一歩を踏み出したのか
2026年09月01日
日米協調介入は円安の是正にどこまで効果を発揮したのか?
更なる介入の合理性は低下。レジーム転換の有無が今後の焦点に
2026年09月14日
コーポレートガバナンス・コード改訂の焦点
企業の自律的な判断と実質を伴う説明が問われる
2026年08月27日
第230回日本経済予測(改訂版)
円安・金利上昇下の日本経済と成長力強化への課題①AI活用による経済への影響、②資産市場と経済の好循環、を検証
2026年09月08日

