サマリー
中国はこれまで経済成長の原動力として“三為主、二致力、一促進”という理念、即ち、外資・工業・輸出の3つを軸にハイテク産業と高付加価値サービス業の2つを育成し、経済技術開発区を多機能総合産業区へと発展させることを重視してきた。しかし、外資導入金額(実行ベース)は11年に前年比9.7%増の1,160億ドルとなったものの、単月でみると12年4月までの6ヵ月間は前年比マイナスが続いている。成長余力が期待される“中西部”や“農業”をキーワードに、日本・台湾などのアジア圏が投資の下支えをしているが、欧州債務危機を発端とする輸出減速に加え、中国の物価・賃金コストの上昇、投資先としての東南アジアの台頭が、中国への直接投資の勢いを削ぐ要因となりつつある。優遇税制や参入緩和などで促進してきた“引進来(外資導入)”による成長刺激政策の効力は限界に近づいていよう。
一方、“走出去(中国からの対外直接投資の推進)”政策は漸く軌道に乗ってきた。中国の非金融機関の対外直接投資額(実行ベース)は、11年に前年比1.8%増の600.7億ドルとなった後、12年1-4月期は72.8%増の231.6億ドルと大きく増加している。中国商務部は第12次5ヵ年計画期間中、外資導入の目標を年約1,200億ドル、対外直接投資の目標を年平均17%増やして15年には1,500億ドルにするとしており、この規模の逆転は中国が“引進来”を維持する難しさを認識しているためとも捉えられる。
こうしたなか、中国政府はCEPAやECFAを活用し、金融・資本市場の改革に着手している。具体的には人民元の国際化や点心債(オフショア人民元建債券)の活用促進、先物取引市場の拡充などが、昨年から想定以上の速さで進んでいる。台湾と相互に銀行の出資規制緩和を加速させ、5月の米中戦略・経済対話では国有企業の配当性向の引き上げを表明し、コーポレート・ガバナンスの改善を図る姿勢をみせた。この改革を金融・会計を中心にサービス業の幅を広げ、質的向上の契機としたいところだ。中国市場・企業へのアクセスのしやすさが向上し、企業経営インフラがより整備されれば、これまで中心だったグリーンフィールド投資から証券投資にまで外資導入の幅が広げられる機会となろう。成長鈍化が鮮明になればなるほど、改革のスピードが問われるが、“引進来”の再点火として、その舵取りに世界が注目している。
一方、“走出去(中国からの対外直接投資の推進)”政策は漸く軌道に乗ってきた。中国の非金融機関の対外直接投資額(実行ベース)は、11年に前年比1.8%増の600.7億ドルとなった後、12年1-4月期は72.8%増の231.6億ドルと大きく増加している。中国商務部は第12次5ヵ年計画期間中、外資導入の目標を年約1,200億ドル、対外直接投資の目標を年平均17%増やして15年には1,500億ドルにするとしており、この規模の逆転は中国が“引進来”を維持する難しさを認識しているためとも捉えられる。
こうしたなか、中国政府はCEPAやECFAを活用し、金融・資本市場の改革に着手している。具体的には人民元の国際化や点心債(オフショア人民元建債券)の活用促進、先物取引市場の拡充などが、昨年から想定以上の速さで進んでいる。台湾と相互に銀行の出資規制緩和を加速させ、5月の米中戦略・経済対話では国有企業の配当性向の引き上げを表明し、コーポレート・ガバナンスの改善を図る姿勢をみせた。この改革を金融・会計を中心にサービス業の幅を広げ、質的向上の契機としたいところだ。中国市場・企業へのアクセスのしやすさが向上し、企業経営インフラがより整備されれば、これまで中心だったグリーンフィールド投資から証券投資にまで外資導入の幅が広げられる機会となろう。成長鈍化が鮮明になればなるほど、改革のスピードが問われるが、“引進来”の再点火として、その舵取りに世界が注目している。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
日本経済見通し:2024年2月
2025年度にかけて1%前後のプラス成長と2%インフレを見込む
2024年02月22日
-
ビットコイン現物ETF、日本で組成可能か?
米SEC承認を受けて、日本で導入することの法制度上の是非を考察
2024年02月13日
-
第220回日本経済予測(改訂版)
賃上げの持続力と金融政策正常化の行方①自然利子率の引き上げ、②投資と実質賃金の好循環、を検証
2024年03月11日
-
日本経済見通し:2024年3月
24年の春闘賃上げ率5%超えを受け、日銀はマイナス金利政策を解除
2024年03月22日
-
2024年の日本経済見通し
緩やかな景気回復と金融政策の転換を見込むも海外経済リスクに注意
2023年12月21日
日本経済見通し:2024年2月
2025年度にかけて1%前後のプラス成長と2%インフレを見込む
2024年02月22日
ビットコイン現物ETF、日本で組成可能か?
米SEC承認を受けて、日本で導入することの法制度上の是非を考察
2024年02月13日
第220回日本経済予測(改訂版)
賃上げの持続力と金融政策正常化の行方①自然利子率の引き上げ、②投資と実質賃金の好循環、を検証
2024年03月11日
日本経済見通し:2024年3月
24年の春闘賃上げ率5%超えを受け、日銀はマイナス金利政策を解除
2024年03月22日
2024年の日本経済見通し
緩やかな景気回復と金融政策の転換を見込むも海外経済リスクに注意
2023年12月21日