2023年12月22日
サマリー
◆2023年12月、バーゼル銀行監督委員会(BCBS)は、銀行勘定の金利リスク(IRRBB:Interest Rate Risk in the Banking Book)に対する規制の見直しを協議していると発表した。現在、IRRBBは第二の柱である「金融機関の自己管理と監督上の検証」における管理が定められている。つまりIRRBB規制は各行の自己管理によるモニタリングに留まり、基準超過時に資本賦課されない。収益源泉である金利リスクに対しても資本賦課されると、銀行経営に広範な影響が生じることが懸念され、結果的に第二の柱に留まった経緯がある。
◆米シリコンバレー銀行(SVB)破綻の原因は、解約リスクの高いスタートアップ企業からの大口法人預金の大半をリスクヘッジせずに長期債で運用するなどといった、典型的な金利リスク管理上の失敗にある。米国では、2018年にドッド・フランク法改正で、厳格な規制・監督対象となる銀行持株会社の資産基準が引き上げられ、(SVBを含む)総資産2,500億ドル未満の中小規模行については米連邦準備制度理事会(FRB)による厳しい監督の対象外となった。これに伴い、中小規模行でのIRRBBの管理が杜撰になるなど、監督不足が指摘される状況が生じていた。
◆金利リスクに対して資本賦課された際のシミュレーションでは、邦銀105行の2023年3月末の自己資本比率の低下幅の平均は1.56%にも上り、相応のリスクアセットの削減や資本増強が求められる結果となった。金利リスクに対する資本賦課が実現すれば、多くの地域金融機関は債券運用を敬遠し、市場に混乱が生じかねない。一方、資本余力のある大手行は資本賦課の影響が比較的小さく、金利上昇を歓迎しており、規制強化下でも長期貸出や長期債運用を拡大する可能性が高い。すなわち金利リスクの規制強化は、大手行と地域金融機関のリスク選好の差をより開く結果となり得るため、市場への影響という点で両者の違いに留意が必要である。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
テキスト分析が映し出す金融当局の楽観視
金融当局ネガティブ指数で、金融システムへの警戒感の変化を読む
2026年02月26日
-
大和のクリプトナビ No.7 株式のトークン化に関する米国周辺の動向
様々な主体がトークン化に取り組むが、その背景は様々
2026年02月03日
-
2026年の東証改革の方針
上場会社の質の向上と新陳代謝を促進する市場機能の強化
2026年02月02日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
中国によるレアアース・レアメタルの輸出規制は日本の実質GDPを1.3~3.2%下押し
供給制約により、自動車産業を中心に生産活動の低迷が懸念される
2025年12月05日
-
2026年の日本経済見通し
1%弱のプラス成長を見込むも外需下振れや円急落、金利高等に注意
2025年12月23日
-
2026年度税制改正大綱解説
給付付き税額控除導入を含めた所得税の抜本的改革が必要
2025年12月25日
-
中国経済:2025年の回顧と2026年の見通し
不動産不況の継続と消費財購入補助金政策の反動で景気減速へ
2025年12月23日
-
「飲食料品の消費税ゼロ」の経済効果
世帯あたり年8.8万円の負担軽減になり個人消費を0.5兆円押し上げ
2026年01月20日
中国によるレアアース・レアメタルの輸出規制は日本の実質GDPを1.3~3.2%下押し
供給制約により、自動車産業を中心に生産活動の低迷が懸念される
2025年12月05日
2026年の日本経済見通し
1%弱のプラス成長を見込むも外需下振れや円急落、金利高等に注意
2025年12月23日
2026年度税制改正大綱解説
給付付き税額控除導入を含めた所得税の抜本的改革が必要
2025年12月25日
中国経済:2025年の回顧と2026年の見通し
不動産不況の継続と消費財購入補助金政策の反動で景気減速へ
2025年12月23日
「飲食料品の消費税ゼロ」の経済効果
世帯あたり年8.8万円の負担軽減になり個人消費を0.5兆円押し上げ
2026年01月20日


