銀行勘定の金利リスクへの資本賦課をめぐる議論が再燃

IRRBB規制が第一の柱になる懸念が再び高まる?

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サマリー

◆2023年12月、バーゼル銀行監督委員会(BCBS)は、銀行勘定の金利リスク(IRRBB:Interest Rate Risk in the Banking Book)に対する規制の見直しを協議していると発表した。現在、IRRBBは第二の柱である「金融機関の自己管理と監督上の検証」における管理が定められている。つまりIRRBB規制は各行の自己管理によるモニタリングに留まり、基準超過時に資本賦課されない。収益源泉である金利リスクに対しても資本賦課されると、銀行経営に広範な影響が生じることが懸念され、結果的に第二の柱に留まった経緯がある。

◆米シリコンバレー銀行(SVB)破綻の原因は、解約リスクの高いスタートアップ企業からの大口法人預金の大半をリスクヘッジせずに長期債で運用するなどといった、典型的な金利リスク管理上の失敗にある。米国では、2018年にドッド・フランク法改正で、厳格な規制・監督対象となる銀行持株会社の資産基準が引き上げられ、(SVBを含む)総資産2,500億ドル未満の中小規模行については米連邦準備制度理事会(FRB)による厳しい監督の対象外となった。これに伴い、中小規模行でのIRRBBの管理が杜撰になるなど、監督不足が指摘される状況が生じていた。

◆金利リスクに対して資本賦課された際のシミュレーションでは、邦銀105行の2023年3月末の自己資本比率の低下幅の平均は1.56%にも上り、相応のリスクアセットの削減や資本増強が求められる結果となった。金利リスクに対する資本賦課が実現すれば、多くの地域金融機関は債券運用を敬遠し、市場に混乱が生じかねない。一方、資本余力のある大手行は資本賦課の影響が比較的小さく、金利上昇を歓迎しており、規制強化下でも長期貸出や長期債運用を拡大する可能性が高い。すなわち金利リスクの規制強化は、大手行と地域金融機関のリスク選好の差をより開く結果となり得るため、市場への影響という点で両者の違いに留意が必要である。

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