コロナ禍における資金繰り環境の現状と先行き

足元では資金需要の増加が落ち着く、企業の債務返済は途上

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  • 遠山 卓人

サマリー

◆足元の企業の資金繰り動向を確認すると、貸出残高の水準については依然として高い業種も見られるものの、2020年に急増した資金需要が一服したことが確認できる。企業財務については、宿泊業、飲食サービス業の有利子負債比率の改善が進んでおらず、債務返済は途上であることがうかがえる。

◆銀行部門では、地域銀行の不良債権残高が増加し続けているもののリーマン・ショック期と比較するとその水準は低く、貸出金に対する割合も低い。また、これまで相応に達成すべき水準(国際基準行は8%、国内基準行は4%)を上回ってきた自己資本比率にも大きな変化は見られない。貸出態度のスタンスについては、コロナ禍で打撃を受けている対面サービス業等に対しては厳しい状態にある。

◆資金繰り環境の先行きについては、新型コロナウイルスのオミクロン株による新規感染者数が減少していることより短期的には再びひっ迫する可能性は高くないと考えられるが、新たな変異株出現、ウクライナ情勢の悪化に伴う輸出入の停滞、原材料価格の高騰等のリスク要因に注意する必要がある。また、債務返済の進展についても、新型コロナウイルスの感染状況等に左右される状況が続くと思われる。

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