地域金融機関によるグリーンファイナンスの現状と展望

現状のグリーンファイナンスは知見蓄積の「過程」

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  • ニューヨークリサーチセンター 研究員(NY駐在) 藤原 翼

サマリー

◆社会全体で脱炭素への取組みが求められている中、地域金融機関が中小企業の脱炭素化に果たす役割は大きい。他方で地域金融機関にとっては、融資先企業や地域経済の持続可能性を考慮することは、自身の投融資ポートフォリオのリスクリターン改善に繋がる点で重要とされている。

◆現在注目されているグリーンローンやサステナビリティ・リンク・ローンの実行により、貸し手と借り手の双方が「レピュテーション効果」や「対話の深化」に関するメリットを享受できると期待される。こうしたグリーンファイナンスを中小企業にも推進していくにあたっては、そもそも多くの中小企業でカーボンニュートラル対応の検討が進んでいない点や、利用する際の金銭コスト・手間の面で負担が重い点等の課題がある。中小企業での普及を進めていくためには、中小企業にも利用しやすい枠組みを整える必要があるだろう。

◆また、脱炭素の動向が金融機関の投融資ポートフォリオに影響を与えるのであれば、本来ならば通常の投融資においてもサステナビリティの考慮やモニタリングの実施等を行う必要がある。しかし、現状では金融業界全体で知見が不足している。現在は、グリーンローンやサステナビリティ・リンク・ローン等を実行することにより、金融機関と借入企業がレピュテーション面でのメリットを享受しつつ、環境等のサステナビリティに関するリスクを適切に評価するための知見を蓄積し始めた段階といえよう。

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