2021年06月04日
サマリー
◆2021年4月分の貸出関連統計では、貸出増加率(前年同月比)の大きな低下が複数項目で確認された。背景としては、①前年4月に貸出が大きく増加したこと、②2021年3月末に申込期限を迎えた民間金融機関による実質無利子・無担保融資の駆け込み需要が3月に発生し、翌月4月に信用保証実績が反動で大きく減少したことの2点があると考えられる。もっとも、総貸出の増加率と残高の水準は新型コロナウイルス感染拡大前より高い状態にあり、全体的な資金需要は依然として大きいといえる。
◆資金需要に関して、足元では業種間の違いが表れ始めている。飲食、宿泊をはじめとするサービス産業等では資金需要の大きい状態が続いている一方、輸送用機械等の一部の輸出関連産業では貸出増加率の減少が確認された。また、情報通信産業等のように貸出増加率がマイナスで推移している産業も見られ、業種間での業況が資金需要に影響を及ぼしていると思われる。
◆今後の貸出動向については、業種間で引き続き異なる動きが見られるだろう。輸出関連産業等については、ワクチン接種の進展に伴う外需の回復を背景に手許資金確保や資金繰り対応のための資金需要が減少すると予想される。一方、飲食・宿泊関連のサービス業等では、収束が遅れる国内状況から引き続き資金確保のニーズが高いと見込まれる。足元で続く感染拡大による経済活動の停滞等を踏まえると、全体的な貸出の水準は新型コロナウイルス感染拡大前よりも高い状態が続くと考えられる。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
株主還元に比率目標を掲げる主要企業が6割を超える
DOEは機械や化学で、累進配当は卸売業や銀行業での採用率が高い
2025年09月11日
-
特別配当・記念配当の動向と株価への影響
毎年1割程度が特別・記念配当を実施、株価押し上げ効果は短期的
2025年09月09日
-
意見分かれるグロース市場の上場維持基準見直し案
2025年9月に制度要綱が公表予定
2025年07月28日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
-
2025年ジャクソンホール会議の注目点は?
①利下げ再開の可能性示唆、②金融政策枠組みの見直し
2025年08月20日
-
既に始まった生成AIによる仕事の地殻変動
静かに進む、ホワイトカラー雇用の構造変化
2025年08月04日
-
米雇用者数の下方修正をいかに解釈するか
2025年7月米雇用統計:素直に雇用環境の悪化を警戒すべき
2025年08月04日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
2025年ジャクソンホール会議の注目点は?
①利下げ再開の可能性示唆、②金融政策枠組みの見直し
2025年08月20日
既に始まった生成AIによる仕事の地殻変動
静かに進む、ホワイトカラー雇用の構造変化
2025年08月04日
米雇用者数の下方修正をいかに解釈するか
2025年7月米雇用統計:素直に雇用環境の悪化を警戒すべき
2025年08月04日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日