四半期金融レポート2020年4月号

①新型コロナウイルスの感染拡大と住宅ローンのリスク②ECBによる気候関連リスクへの対応③2020年代の地域別人口動態と保険ニーズ

RSS
  • 坂口 純也
  • 柿沼 英理子
  • 斎藤 航

サマリー

◆四半期金融レポートは、国内外の資金循環や金融面での構造的な変化、その兆候を四半期ごとに点検することを目的としている。今回のレポートにおいては、以下の3つのテーマを取り上げる。

◆①コロナショックは住宅ローンに飛び火するか?:2008年のリーマン・ショック以降、住宅ローン返済額の収入に対する比率は低下基調にあったものの、2016年1月のマイナス金利政策導入によって再び上昇し、足元は高い水準にある。リーマン・ショック時との違いは、借手の年間収入の減少だけでなく、購入価額や借入金の比率の上昇が要因にある。このような中、今回の新型コロナウイルスの感染拡大によって家計の収入が減少した場合、これまでよりも住宅ローンのデフォルトが生じやすくなっていると考えられる点に注意が必要である。

◆②新型コロナ危機下でECBの気候関連リスク対応は停滞する可能性:ECB(欧州中央銀行)のラガルド総裁が金融政策の見直しの一環として気候変動問題を扱うことを表明するなど、各国中央銀行や金融監督当局が気候関連リスクへの対応を加速させている。その一方、外部不経済によって引き起こされた気候変動問題への対応は政府の役割であり、中央銀行がこれに取り組む正当性はないという批判も上がっている。こうした中、国際決済銀行(BIS)はグリーンスワンと題されたレポートを公表し、気候変動問題に対して中央銀行が取り組むべき施策について幅広い提言を行った。これを踏まえ、本章では、中央銀行による、プルーデンス政策ならびに金融政策を通じた気候変動への対応について検討する。

◆③2020年代地域別人口動態変化と生命保険に対するニーズへの影響:生命保険に対するニーズは年齢によって異なり、30-50歳代では死亡保障ニーズが高く、50歳代では老後資金ニーズが高いといえる。また、これらの年齢を世帯主とする世帯数の2030年変化率(対2020年比、推計)は、地域ごとに差異がみられる。この差異を考慮すると、各地域で生命保険に対するニーズに違いが出ると考えられる。各々の地域での生命保険市場においてニーズの変化に合わせた対応が求められよう。

このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。

執筆者のおすすめレポート