2018年02月21日
サマリー
◆国内銀行の貸出約定平均金利は長期的な低下トレンドを描き、貸出は、より金利の低い水準へ徐々にシフトしている。足下では、金利の低下幅がやや縮小し、7.0%以上の高金利貸出は増加している。
◆貸出約定平均金利の長期低下トレンドは、市中金利の低下が証書貸付に反映されたものであり、足下の金利低下一服感には、カードローン等という高めの金利の当座貸越の増加が反映されていると考えられる。
◆金利の低下は企業にとって良いことだが、企業の長期の借入金が増加する一方で、短期の借入金の減少が目立つ。長期の借入金を増やしても、企業にとって事業活動に必要なキャッシュフローと、資金調達に伴うキャッシュフローのタイミングを合わせることが難しい。
◆当座貸越は、企業にとって疑似的なエクイティ(資本)とみなすことができ、特に、資本市場へのアクセスが限られる中小企業等向けで大きな役割を果たしていると考えられる。銀行としても相対的に金利が高く、貸出先企業の経営状態を確認する機会を得ることになり、担保や保証に依存しない事業性評価融資につなげることが期待できる。
◆金融庁が主に地域金融機関に求めていることは、商流と金流の同時把握であり、フィンテックを活用した仕組みを整備して、これまでの当座貸越に相当する機能を備えることだろう。「日本型金融排除」の対象となっている層に対し、金利がやや高めの当座貸越か当座貸越に相当する機能を提供することは検討に値するのではないだろうか。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
-
FinTechが変える決済サービスの付加価値
商流情報の付加、仮想通貨の導入等が決済関連の付加価値に及ぼす影響
2017年10月25日
-
銀行カードローン・アパートローン残高増加の動向
貸出残高の推移・背景とリスクを探る
2018年01月12日
同じカテゴリの最新レポート
-
株主還元に比率目標を掲げる主要企業が6割を超える
DOEは機械や化学で、累進配当は卸売業や銀行業での採用率が高い
2025年09月11日
-
特別配当・記念配当の動向と株価への影響
毎年1割程度が特別・記念配当を実施、株価押し上げ効果は短期的
2025年09月09日
-
意見分かれるグロース市場の上場維持基準見直し案
2025年9月に制度要綱が公表予定
2025年07月28日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
-
2025年ジャクソンホール会議の注目点は?
①利下げ再開の可能性示唆、②金融政策枠組みの見直し
2025年08月20日
-
既に始まった生成AIによる仕事の地殻変動
静かに進む、ホワイトカラー雇用の構造変化
2025年08月04日
-
米雇用者数の下方修正をいかに解釈するか
2025年7月米雇用統計:素直に雇用環境の悪化を警戒すべき
2025年08月04日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
2025年ジャクソンホール会議の注目点は?
①利下げ再開の可能性示唆、②金融政策枠組みの見直し
2025年08月20日
既に始まった生成AIによる仕事の地殻変動
静かに進む、ホワイトカラー雇用の構造変化
2025年08月04日
米雇用者数の下方修正をいかに解釈するか
2025年7月米雇用統計:素直に雇用環境の悪化を警戒すべき
2025年08月04日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日