2012年11月01日
サマリー
◆バブル崩壊後、日本経済は成長が滞り、「失われた20年」と評されることも多い。その中でも、資本市場の停滞は目を覆うばかりである。資本市場の活性化の必要性については、幾度となく問題意識が提起されたにもかかわらず、いまだ抜本的な解決策は見つけ出せていない。
◆今回、大和総研金融調査部では、資本市場における「失われた20年」を振り返り、停滞要因の整理を試みた。本質的な問題点を洗い出し、今後、実効性のある活性化策を議論する際の土台とすることが目的である。
◆第3章3節では、金融仲介機関の行動が市場に及ぼした影響について、公的金融システム、とりわけ郵貯に焦点を当てる。かつて、郵貯は財政投融資という巨大な官製金融システムの中核を形成しており、民間に対して優位性が与えられてきた。
◆郵貯には、[1]金利の優位性、および[2]民営化前の「政府保証」、が存在していた。それを背景に、過去、何度も「郵貯シフト」(民間金融機関から郵貯に資金が移る現象)が起こった。大規模なシフトは、昭和金融恐慌時にも起きており、非常に長期にわたって優位性が存在し続けていることがわかる。そして、民営化後もなお、金利の優位性と「暗黙の政府保証」が残存している。資本市場の観点からみれば、こうした貯蓄手段の存在は、リスク資金への流れを滞らせる一因にもなり得る。
◆郵貯に象徴される公的金融システムが包含する課題を洗い出し、見直しを行っていくことは、民間金融の活力を高めることにもつながるのではないだろうか。
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