2017年10月13日
サマリー
◆経済・社会構造の変化、技術イノベーションの波は生命保険業界にも及んでくる。20年後を想定するとビジネスの持続可能性について懸念される事項は以下の7つである。
◆まず20年後に労働力人口比率が50%を下回れば、業界全体の保有契約高が2015年度の858兆円より13%低下(約100兆円減少)すると見込まれることである。次に、都道府県別では市場が縮小していく地域が一層増加し、全国ベースでビジネス展開している生保各社にとって、効率性の向上がより求められることである。第三に2035年には、現在の主要顧客層である団塊の世代のすべてが死亡平均年齢に達することである。第四に2020年には世帯数がピークアウトすることである。
◆第五に医療・介護費の上昇により社会保険料が増加することで民間保険のリストラが将来的にも続くことである。第六に将来のコア顧客層である現在の若年層の所得格差の固定化が見込まれ、家族形成にも影響を与えることである。最後に、顧客のニーズの多様化がさらに進展し、FinTech(IoT、ビッグデータ、AI)が生命保険会社の引き受けるリスク量、質を大きく変化させる可能性があることが挙げられる。
◆上記の懸念事項に対して、既存の主力商品で対応できるか、現在のコスト構造で収益の下方圧力に耐えられるかが主要経営課題となる。
◆大和総研の試算では、20年後に生保ビジネスの持続可能性を維持するためには、保有契約高で100兆円の維持が必要であるとの結論に至った。
◆複雑化しかつ迅速さが求められる商品開発の負担、事業費率の大幅な低下を20年後に見据えると、保険業界において本格的な再編が起こる可能性は否定できない。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
金利上昇下における預金基盤の重要性の高まり
~預金を制するものは金融業界を制す~『大和総研調査季報』2025年夏季号(Vol.59)掲載
2025年07月24日
-
地方銀行の越境再編
その土台にある地域経済圏の再構築
2025年07月11日
-
ステーブルコイン推進へ舵を切る米国(後編)
GENIUS法案は如何にして米ドルの支配的地位を補強するか
2025年06月13日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
-
2025年ジャクソンホール会議の注目点は?
①利下げ再開の可能性示唆、②金融政策枠組みの見直し
2025年08月20日
-
既に始まった生成AIによる仕事の地殻変動
静かに進む、ホワイトカラー雇用の構造変化
2025年08月04日
-
米雇用者数の下方修正をいかに解釈するか
2025年7月米雇用統計:素直に雇用環境の悪化を警戒すべき
2025年08月04日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
2025年ジャクソンホール会議の注目点は?
①利下げ再開の可能性示唆、②金融政策枠組みの見直し
2025年08月20日
既に始まった生成AIによる仕事の地殻変動
静かに進む、ホワイトカラー雇用の構造変化
2025年08月04日
米雇用者数の下方修正をいかに解釈するか
2025年7月米雇用統計:素直に雇用環境の悪化を警戒すべき
2025年08月04日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日