相続資産の移転と地域のリテール金融市場の将来

『大和総研調査季報』 2017年夏季号(Vol.27)掲載

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  • 金融調査部 研究員 森 駿介
  • 土屋 貴裕

サマリー

わが国において相続発生件数や発生額は今後拡大していくと予想され、それは金融機関にとっては脅威とも機会とも捉えられる。本稿では、地域の視点から相続資産の動向を分析する。まず、地域別に見ると、相続の主要な発生源とも言える富裕層は人口の多い三大都市圏に集中している。一方で、その資産構成は関東圏や東海三県などでは実物資産比率が比較的高いのに対し、その他の地域では現預金や株式など流動性の高い資産の比率が高いことが分かった。


次に、2025年までの10年間について相続資産の地域間移転の推計を行うと、東北・中国・四国地方の多くの県で相続資産の純流出が見られることが予想される。また、これらの地域ではリテール金融市場の規模縮小も同時に進む可能性がある。2025年以降も団塊の世代のさらなる高齢化により、相続発生件数や発生額はより拡大していくと考えられる。特に子供と別居する高齢者の比率が高い地域や高齢者への資産偏在度合いが高い地域においては、相続資産の流出が引き続き予想されることから、地方自治体や金融機関にとっては今後に備えた早めの対応策が求められるだろう。


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