大気汚染現象の一種で、オゾン(O3)や硝酸過酸化アシル(PAN)などの光化学オキシダントがばい煙(※1)などともにスモッグ(※2)を作る現象をいう。光化学オキシダントは、工場や自動車から排出される窒素酸化物(NOX)や揮発性有機化合物(VOC)を主体とする汚染物質が、太陽光線の照射を受けて光化学反応を起こすことにより発生する二次的な汚染物質である。
光化学スモッグは、日最高気温がおよそ25℃以上で日差しが強く、風が弱いときに発生しやすい。人および環境に及ぼす影響としては、目やのどが痛くなる、呼吸が苦しくなるなど粘膜に対する健康被害や、農作物が腐食したりゴムなどに亀裂が生じたりするなどの被害が報告されている。光化学スモッグという言葉は1940年代にロサンゼルスで発生したときに初めて使われた。
![光化学スモッグ発生イメージ](/common/img/report/20130717_007436_01.png)
我が国における光化学スモッグの発生状況は、光化学スモッグ注意報の発令延日数および発令都道府県数から知ることができる。図表からは、1970年代前半に急激に増加し、1980年に入るころには一度改善が見られたものの、その後、再び漸増し、ここ数年間で急激に減少に転じたことがわかる。
![図表 光化学スモッグ注意報発令延日数および発令都道府県数の推移](/common/img/report/20130717_007436_02.png)
光化学スモッグ注意報は大気汚染防止法の規定により都道府県知事等によって発令および解除される。多くの都道府県では、光化学オキシダント濃度が0.12ppm(百万分率)以上になり、かつ、気象状況からその状態が継続すると認められるときに注意報が発令される。また、注意報等(※3)の発令に合わせ、協力工場に対してNOX等の排出削減を要請したり、地域住民に対しては屋外での活動を控えて屋内に入ることや、不要・不急の自動車の使用を控えるなどの協力を求めたりしている。注意報等の伝達は防災無線放送で行うが、テレホンサービスやメール配信、インターネットによる情報提供を行っている自治体も多い。
光化学スモッグの発生を抑えて健康被害等を未然に防ぐには、NOXやVOCなどの汚染物質の削減対策を進めることが重要であるとされている。我が国では、NOX対策として1968年に制定された大気汚染防止法(※4)や、2002年からは自動車NOX・PM法(※5)等に基づく削減対策が進められている。また、VOC対策として2006年から大気汚染防止法に基づく排出規制が始められている。これらの削減対策の効果を図表中のグラフ変化から説明することが容易でないように、光化学スモッグは景気変動や産業構造の変化、エネルギー源の変化やエコカーの普及などといった経済社会的条件に加えて気象条件が複雑に組み合わさった現象であることが推察される。国内では残された課題を解決していくために、NOXやVOCのみならず他のばい煙を含めた総合的な検討を行う方向で議論が進められている(※6)。また、近年はPM2.5なども含めた東アジアなど近隣諸国からの越境汚染の影響も指摘されており、国内対策のみならず、国際的な協力による光化学スモッグ対策の取組みが進められている(※7)。
(※1)物の燃焼等に伴い発生する硫黄酸化物、ばいじん(いわゆるスス)、有害物質をいう(環境省「大気汚染防止法の概要」から引用)。
(※2)高濃度の汚染物質により視程が悪くなる状態。もともとは、煙(Smoke)と霧(Fog)の合成語。(気象庁「大気汚染に関する用語」から引用)
(※3)多くの都道府県で光化学オキシダント濃度が0.24ppm以上になれば「警報」が、0.40ppm以上になれば「重大緊急警報」がそれぞれ発令される。
(※4)総務省法令データ提供システム「大気汚染防止法」
(※5)環境省「自動車NOX・PM法について」
(※6)環境省「光化学オキシダント調査検討会(平成24年度)」
(※7)日中韓三カ国環境大臣会合ウェブサイト「光化学オキシダントに関する研究協力」
(2013年7月17日掲載)
(2014年8月14日更新)
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